スマホの【衛星通信】最新事情。国内4キャリアも続々と新技術を導入中!
ウクライナ侵攻でのドローン飛行用のネット回線、そして能登半島地震では損傷した基地局の代替として注目される衛星通信システム。これまでは米スペースXのStarlinkの一強だったが、ライバルたちも新衛星の打ち上げに大成功。その新技術や国内4キャリアの動向を紹介です! 【写真】国内キャリアの新技術ほか(全19枚) * * * ■国内の衛星通信はauが一歩リード? 能登半島地震では通信インフラが遮断された地域での緊急回線として、被災者だけでなく自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)にも活用される、スペースXの衛星通信システム「Starlink(以下、スターリンク)」。 2022年のロシアによるウクライナ侵攻で世界的に注目され、日本では23年に離島を含む全地域をカバーするサービスを開始。地上の基地局と連携し、スマホやWi-Fiを安定して利用できるのはスターリンク一択な状況だったが、昨年末からは大手ITや通信企業が続々と衛星を打ち上げてスターリンクを猛追。 そんな中、これらの企業と国内キャリアとの提携も活発化。衛星通信の最新事情を、長年にわたって通信業界を取材するITジャーナリストの法林岳之(ほうりん・たかゆき)さんに解説してもらいます。 ――衛星通信は、いつぐらいからスタートしたものなのでしょうか? 法林 一般的に衛星を利用した通信が最初に注目されたのは1963年11月の「ケネディ米大統領暗殺事件」です。このときに使用されたのは「リレー1号」と呼ばれる通信衛星で、地球を3時間で周回する衛星でした。 その後、放送用の静止衛星が打ち上げられ、日本では赤道上空の高度約3万6000㎞から、BSやスカパー!などの衛星放送が提供され、これは通信にも利用されるようになりました。 一方で、近年の衛星通信でスマホやWi-Fiを利用するのに使われるのは、高度550㎞付近を軌道する低軌道衛星です。こちらは低高度から電波を届けられ、同一軌道上に衛星を配備する「衛星コンステレーション」を行なうことで安定した電波を広範囲に送信できるのが特徴となっています。 ――一般ユーザーが利用できるインターネットや携帯電話の衛星通信の誕生は? 法林 日本国内で本格的な衛星インターネット通信がスタートしたのは99年です。衛星放送技術や受信アンテナを転用したNTTサテライトコミュニケーションズの「Mega Wave」は、当時のインターネットとしては高速な下り最大1Mbpsの通信速度を実現。 しかし、放送用の静止衛星は天候によって通信が不安定になることも多く、1年ちょっとでサービスが終了してしまったのです。 そして携帯電話の衛星通信もこの時期に登場しています。99年にイリジウムが日本国内でのサービスを開始。イリジウムは現在、衛星通信の主力となっている低軌道衛星を使用したサービスでしたが、月額1万600円~(今年1月現在の月額)という高額な料金もあり、特定用途にしか普及しませんでした。 ――でも、低軌道衛星だから通信は安定しているのでは? 法林 衛星を一列に連ねて運用する衛星コンステレーションで安定した電波を発信するためには、多くの低軌道衛星が必要です。イリジウムが運用している低軌道衛星は66基前後。一方、スペースXが手がけるスターリンクの衛星数は5000基前後。通信の安定性では比較にならない数字なのです。