石破政権下では日本の経済成長を期待できない
なぜなら、地方政府への補助金拡大は、その分中央政府の支出が増えることになるが、地方への所得分配強化は市場メカニズムを阻害する副作用のほうが大きいと考えるからだ。また、防災庁の設置は、「霞ヶ関の仕事や権益」は増えるが、新たな組織を作るからといって、政策の実効性は必ずしも高まるとは限らない。こども家庭庁の創設(2023年4月)もそうだが、行政組織の肥大化を理由に将来の増税が行われる可能性が高まり、経済成長を下押しするだろう。
結局、経済成長を、短期的にも長期的にもサポートする政府の対応で有効なのは、家計部門への減税政策である。そして、長期的な経済成長を高めるには、規制緩和などの政策を地道に進めることも重要である。 だが、政権与党が長引き、自浄機能が失われた自民党政権では難しいのかもしれない。さらに、経済成長を明確に重視している高市氏を党内で支持する政治家は、政治資金不記載の問題で、政治力をさらに低下させつつあることも、無視できないリスクある。
石破首相の「前言撤回」によって、株式や為替市場は落ち着きを取り戻した。だが前向きな経済政策はまったく期待できないため、株式市場が新政権を好感する可能性は低い。10月27日の衆議院選挙を経てもこうした情勢は変わらず、日本株のリターンが米国株を下回り続ける状況は、2025年にかけて続くだろう。 (本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
村上 尚己 :エコノミスト