「ボトックス注射で歩行困難に…」 美容クリニック・TCBを訴えた元勤務医の悲痛な叫び 「練習で注射を打たされ、一時は車椅子生活に」
障害者手帳を取得
“異変”に気付いたのは、それから約1カ月後のこと。 「最初は、何だか足が疲れやすいという程度でした。その内、5歩も歩くとふくらはぎが“つる”ようになってしまい、尋常ではないと思いました」(S氏) 慌てて都内の脳神経外科に駆け込むと「副作用のリスクがある本物の薬剤を練習で使うなんて」と驚かれたうえ、「注射により足の筋力が著しく低下している」との診断を受けた。 S氏はこの頃、TCBを退職し労災としての対応などを求めたが、はぐらかされるばかり。 そこで診断書を片手に、弁護士に助けを求めたのである。担当する五領田有信(ごりょうだありのぶ)弁護士が語る。 「美容クリニックでのトラブルは、被害者が同意書などを交わしていると、泣き寝入りになることが多い。今回は勤務医が被害者という、極めてレアなケース。戦える見込みがあると考え、一昨年9月に損害賠償請求を起こしました」
「走ったりはとてもできない」
訴訟を準備する間にもS氏の症状は重くなり、 「一時は車椅子生活になってしまったほどで、障害者手帳(6級)も取得しました。リハビリで少しずつ改善していますが、走ったりはとてもできません」(S氏) と嘆くのだ。そしてTCBにはこう憤る。 「自分も医師なので、どうしても事故が生じるのは理解できます。しかし謝罪もケアもないというのは、あまりに無責任。そんな所だと分かっていたら、就職なんてしませんでした」 TCBに見解を求めるも、回答はなかった。今月26日の判決が注目される。
「週刊新潮」2024年12月26日号 掲載
新潮社