いくらなんでも安すぎる!! 衝突テスト0点!? たったの20万円だった小型車[タタ・ナノ]を知っているか!
■いまやインドは世界第3位の自動車販売国
それでもナノは、庶民にかけがえのない希望を与えたといえる。ナノさえあれば、少なくとも家族4人が雨に濡れずに遠出が出来た。自由な移動がかなわなかった人たちに「ここではないどこか」へ出かける可能性をもたらしたことは、ナノの計り知れない功績といえよう。 いっぽうナノを作るタタの懐事情は深刻だった。10万ルピーをわずかに超える11万ルピーで売り出してみたのの、実際の収支は完全な赤字で、タタ・モータースはナノを売れば売るほど赤字になった。 しかしもっとも意外だったことは、庶民の側が思ったほどナノに食指を動かされなかったことだ。思うに、安さを前面に押し出したナノはあまりに質素すぎ、クルマの持つ「今までもよりちょっと素敵な生活」という雰囲気を演出するには物足りなかったのかもしれない。 ナノは2015年に2代目へと進化するが、価格がほぼ2倍に値上げされたこともあり、事態を改善するには至らなかった。天然ガス仕様やセミオートマ仕様なども追加されたが、売上を伸ばすには至らず、結局ナノは2018年に、10年に及ぶモデルライフを終えてしまった。 ひるがえって現在。インドはすさまじいモータリゼーションの中にあり、自動車販売台数で日本を抜く世界3位の国に躍り出た。今やインド製の乗用車が日本に輸入され、人気を博しているのが現実だ。 ナノを生んだラタン・タタ名誉会長は2024年10月にこの世を去った。ホンダWR-Vやスズキ・フロンクスといったインド製モデルが日本でもヒットしている現実をラタン会長が知ったら、自分の決断が間違っていなかったことを誇らしく思うに違いない。 もしWR-Vやフロンクスに乗る機会があったら、インドのモータリゼーション爆発のきっかけとなったあだ花「ナノ」という存在を思い出してほしい!