日本サッカー協会・宮本恒靖会長 「スポーツと勉強、どうしたら両立できるのか」
テスト前は「各駅停車」に乗る
――クラブチームに所属しながら進学校に通うのは、ハードだったのではないでしょうか。 自宅からガンバ大阪の練習場所までは距離があり、通うのは大変でしたが、それ以外の悩みはあまりなかったですね。もちろん、高校には優秀な同級生がたくさんいましたから、「どうやって勉強すればいい成績が取れるだろう」と考えましたけど、自分には「いい成績を取って親に認めてもらう」ことと、「サッカーの技術を磨く」という2つの明確な目的があったので、それを実現するための努力は、当然すべきです。両方できるようにするには、どうしたらいいのかとしか考えませんでした。 ――とはいえ、忙しかったでしょうね。どうやって時間を作ったのですか。 限られた時間をいかに有効活用するか、どの時間を何に使うと効率がいいのかというタイムマネジメントの部分は、高校時代にかなり鍛えられました。定期テスト前はあえて電車の急行ではなく各駅停車に乗り、電車内で座って勉強時間を確保しました。通学時間もずっと勉強しているわけではなくて、例えば20分と時間を決めて、その間だけ集中して勉強したらあとは寝るとか、自分なりの方法を見いだしていきました。 中学時代から、定期試験前には試験までの1日の計画を立て、それに沿って勉強を進めていました。何時から何時はこの教科を勉強して、ここで昼飯を食べて、昼寝をして……とか。もちろん、すべてスケジュールで管理していたわけではありません。ただ、いくら考えても解けない問題に何十分も時間を割くより、決めた時間だけ勉強して、終わったら次の教科に移るほうが効率はいいし、メリハリもつきます。
指定校推薦で大学へ
――プロを目指す場合、大学に進学しないという選択もあったかと思います。当時の宮本さんは、大学進学についてどのように考えていましたか。 プロのサッカー選手になりたいという希望は持っていましたが、プロになっても活躍できる保証はありませんでしたし、いろいろな可能性を自分の中に持つという意味でも、大学には行くべきだろうと考えていました。だからセンター試験(当時)の準備をしたり、予備校の夏期講習に通ったりしていました。ただ、夏期講習の途中で、イギリス遠征のメンバーに選ばれたという連絡が来たので、せっかくのチャンスを逃すわけにはいかないと遠征に参加することを決め、指定校推薦での進学に切り替えました。 ――高校の指定校推薦を取れたということは、学校の成績が優秀だったということですね。 高校1年のころから勉強も手を抜かずにコツコツやっていたのが、よかったのかもしれません。性格的にサッカーの練習で疲れたから寝るとかいうのは、嫌なんですね。なかには寝ていた授業もあるかもしれませんが(笑)。