V3へ羽生が抱えるジレンマ
12月26日に長野市で開幕する全日本フィギュアスケート選手権に向け、羽生結弦(ANA)が25日、試合会場の長野ビッグハットで練習を行った。 日本男子初の連覇を達成したGPファイナル(スペイン・バルセロナ)を終え、16日に帰国してから約10日間。約30分間の練習では今シーズン成功率の下がっている3回転ルッツでミスしたほか、4回転サルコウでもミスがあったが、「精神的にはいつもよりリラックスできている。ノービスのころから一緒にやってきた選手や、ブロック大会で一緒に戦ってきた選手たちと会う機会があるので、楽しくやれている」と穏やかな笑顔を見せた。 3年連続の全日本選手権優勝が懸かることについて聞かれても、「3連覇はまったく意識していない。していないというよりも、関係ないと自分の中で完全に割り切っている。ただ、ショートとフリーをやるということだけを意識している」と、普段通りに「目の前のことに集中する」という信条を強調した。見た目には強気で勝ち気な、いつもの羽生だ。 ただし、そんな中にもふと思案顔を浮かべるような場面があった。「まだGPファイナルから1週間(あまり)しかたっていないし、実際にまだ完璧なわけではない。体調管理には調子の波もある。まずは今できることをしっかりやりたい」と言ったときだ。 思い返すのはやはり、11月8日の中国杯フリー演技直前の6分間練習で起きた他選手との衝突事故。もっとも危惧された脳しんとうのダメージについては、その後、羽生自身が「問題なかった」と説明したが、一番重かった太ももの打撲をはじめとする複数個所の負傷の影響は、今なお様々なところで影を落としている。 中でも大きく響いているのは、今シーズン用意していた新プログラムを披露することができていないという点だ。 全日本選手権に向けた練習後のメディアの囲み取材でも、ショートプログラム(SP)、フリーとも「GPファイナルからプログラムを変えない」と明言した。これは、GPファイナルから帰国した16日に話していたことと同じだった。 このままでいけば、今シーズン開幕前に予定していた、ジャンプの基礎点が1・1倍になる後半に4回転を跳ぶという構成を行うことができないまま、年内を終えることになる。