先生の「複業・兼業」、メリット多くても困難な特殊事情!に風穴を開けるには 許可されやすい兼業、許可されにくい兼業とは
教員の複業の制度と現状
2024年現在、教員の複業は完全に禁止されているわけではありません。すでに実践している方もいますし、許可申請にそれなりの難しさはあるものの、一部の教育委員会においては兼業規定も存在します。 教員の複業に関わる法律や制度は、大きく以下のとおりです。 ・地方公務員法 ・教育公務員特例法 ・各自治体の就業規則など ・総務省のガイドライン この他、過去の事例や判例なども指針の一つになると思われます。 例えば、地方公務員法には、複業に関して(1)営利企業等の従事制限、(2)信用失墜行為の禁止、(3)守秘義務、(4)職務専念義務の項目があります。 (1)は、地方公務員法第38条にこう示されています。地方公務員は、任命権者の許可がなければ、報酬を得て行う継続的な仕事を兼ねることができません。自ら興すもの、法人などから依頼されるもの、これら全てを含めた報酬を受け取る行為に許可が必要だとされていますので、基本的に全ての複業は許可を得る必要性があるのです(ただし、実費交通費などは報酬にはあたりません。また、総務省の資料によると単発の講演や原稿執筆などは本来許可を必要としないとされています)。 また、地方自治体ごとに兼業を許可する際の基準を定めることができるとされています。2019年時点では許可基準を設けている自治体は全国のうち約4割(1788団体中703団体)、さらに内外に発信している自治体はそのうち約半数程度(353団体)にとどまります。 (2)について地方公務員法第33条では、公務員は、職務中も職務中以外でも、その職を貶めるような行為をしてはならないとされています。具体的にどのような行為が信用失墜行為に該当するのかについての一般的な基準はなく、社会通念に基づき個々の事例に応じて判断することになります(『新学校管理読本』『逐条地方公務員法』)。 (3)は、直接的に複業禁止に結びつくことはありませんが、地方公務員法第34条で「職務上知り得た秘密を漏らしてはならない」とあります。 (4)は教育公務員特例法第17条に、「公立学校教員は、教育に関する兼業については許可を受けて従事できる」「非常勤講師は除外」「行政職員向けの兼業許可基準が適用されるわけではない」とあります。 わざわざ教員の兼業についてだけスポットが当てられて、しかも、「許可を受けて従事できる」という表現になっているのは、教育公務員特例法が、地方公務員法より先に制定されたことがあげられます。 また兼業許可申請の方法や許可の基準は自治体によって少しずつ異なりますが一般的な兼業許可申請の流れを紹介します。 【兼業許可申請の流れ】 ・校長に兼業の相談をする ・兼業申請の様式に兼業の情報を記入する ・兼業の根拠が記載された書類と兼業申請の様式を校長に提出する ・校長から所管の教育委員会に提出される ・教育委員会内での稟議があり、許可・不許可が決定する ・校長経由で許可の可否が本人に伝えられる ・許可が下り、申請内容の範囲内で兼業を行うことができる では実際のところ、どのような活動であれば兼業の許可は下りるのでしょうか。結論から述べると「教員が伝統的に従事している兼業は許可が通りやすい」「インターネットが絡んだり、新しい時代のものになればなるほど許可は下りにくい」ということになります。 【許可されやすい兼業の例】 ・教育書・教育関連誌などでの執筆 ・大学や他自治体などでの教育に関する講演 ・教科書・教材の作成 ・家業の神社仏閣や、家業の農家 ・NPO や一般社団法人等の活動 ・消防団の活動 ・スポーツのプロ審判 【許可されにくい兼業の例】 ・営利法人・営利目的の個人事業の起業 ・ブログ・YouTube 等の発信に対する広告収益 ・SNS 等のコンサル・コーチング業 ・WEB での商品紹介案件 ・ハンドメイド作品のWEB 販売 ・教育関係の企業以外からのWEB 案件 ・直接課金してもらうタイプのWEB 発信