経団連、産業データの国際連携整備を提言 欧州先行で日本企業の競争力に深刻な影響も
経団連は15日、国境をこえて企業間で情報システムを連携しデータを共有する仕組み「産業データスペース」の構築に向けた提言を発表した。日本国内には公的にデータの信頼性が保証され、海外版と相互運用できる産業データスペースが整備されていないことから早急に整備するよう求めた。この分野では欧州連合（EU）が先行しており、現状を放置すれば、データの連携、利活用に支障をきたし、日本の産業競争力に深刻な影響を及ぼしかねないと危機感を示した。 具体的には、デジタル庁がリーダーシップを発揮し、経済産業省と連携しながら工程表を提示することを要望。立ち上げの初期費用を予算化することや、中小企業の参加には政府支援を講じることも求めた。 経団連は官民で協議を行う場を新たに設置するとともに、産業データスペースに関する情報発信、普及啓発活動を行っていく。 気候変動問題への対応が課題となる中、原材料調達や製造など供給網全体から算出する製品の二酸化炭素（CO2）排出量に関する情報開示ニーズが高まっている。しかも、原材料調達などでは国際的な企業間取引が欠かせない状況。企業が製品のCO2排出量を算出するには海外企業を含めた各工程のデータを取得する必要があるため、産業データスペースの国際連携が不可欠であるとした。 いまのままでは、国際的な企業間取引のデータ連携で日本は他国の産業データスペースに依存することになると指摘。企業が得られたデータを基に分析し、新たなサービスを創出することも難しくなるとした。 提言の取りまとめを主導した東原敏昭副会長（日立製作所会長）は15日の記者会見で「共有データの活用で新たな価値を生み出していくアプローチが必要だ」と述べた。（佐藤克史）
