「死体と一緒に暮らしたり…」幽霊を信じない民族とは? 怪談研究家の吉田悠軌が語る
若者たちのあいだで噂になっていたお化け屋敷の真相
続いて吉田さんは、台湾での印象的な旅のエピソードを語った。台湾もオカルトや怪談が盛んな土地だという。 吉田:宗教的なものが生きている土壌なので、いろんな話がありますし、心霊スポットも日本と同じような感じであります。“鬼屋”と呼ばれるお化け屋敷も台湾全土あちこちにありますね。 葉加瀬:どんなところを取材されたんですか? 吉田:私が取材したのは、台北から少し南、桃園(タオユエン)の龍潭(ロンタン)という街にあると言われている鬼屋なんですけど、ビジュアルがすごいんですよ。鉄筋コンクリートのようなものが積み重なった、わけのわからない見た目の高いビルがあって、地元の若者たちが鬼屋だと騒いでいたんです。日本人では誰も取材をしていないし、おもしろいなと思ったので行ってみたら、おじさんがDIYで作った“珍建築”でした(笑)。 葉加瀬:なるほど(笑)。そのビルにおじさんは住んでいるのかな? 吉田:住んでいます。鉄鋼関係の社長さんなので、手作りで迷宮みたいなものを建てたそうです(笑)。 葉加瀬:その人しか理解できない世界観の建物ってたまにあるよね(笑)。
事実と噂のギャップを楽しむのも怪談の醍醐味
台北にある某有名ホテルには、昔から幽霊が出るという噂がある。かつて、かのジャッキー・チェンも幽霊を目撃したそうだ。 吉田:実際、昔の軍関係の施設があった場所なんですね。台湾の人の話では旧日本軍の処刑場があって、たくさんの台湾人が殺されたから幽霊が出るみたいです。1階ロビーの隅っこのほうに、それを封じるための巨大なお札があるという話があったので、おもしろいなと思って(取材に行った)。高級ホテルなので泊まれはしないんですけど、ロビーだったら入れますからね(笑)。 吉田さんは実際に現地へ赴いたところ、隅の目立たない場所には、1メートル以上あるお札のようなものが貼られていたという。 吉田:お札らしきものが額に入れてかけてあって、これだと思って一緒に写真を撮りました。そのあとに調べたんですけど、それはお札ではなくて有名な台湾の書家の方が書いたアート作品だったんですね。軍の施設だったことは歴史上の事実なんですけど、そこは処刑場ではなく補給庫でした。 葉加瀬:そうなんだ! 吉田:調べてみると、事実と噂に齟齬があったり間違っていたりするんですけど、それはそれでおもしろいんですよね。 葉加瀬:いろんな人の話からいろんな怪談が生まれてくるってことですね。