黒岩祐治・神奈川県知事に聞く(全文1)女性働きやすさ支援で人口減に歯止め
イクボス宣言、外国人家事支援……「女性が子育てしやすい環境をつくる」
それとともに、神奈川県庁でイクボス宣言というものをいたしました。育児をしたり、また介護をしたりする職員たちを応援するボスという、上司ということですね。ですから、仕事はある程度で切り上げて、「育児、頑張ってきなさいよ」ということに理解を示す上司といったイクボス、神奈川県全体でイクボス宣言をいたしました。 そしてそれを広めるための動画撮影もしたのですけれども、県庁職員がみんな集まって、自分のお子さんを連れてきて、みんなで歌って踊ってということをやって動画をつくった。そのプロセスによっても、何かイクボスの精神が広がってきたなと、そんな感じもするところです。 それから、さらに女性が働きやすい環境をつくるために、非常に大事なことは、やはり家事労働が非常に重大だと、重荷になるということをよく聞きますので、この部分に対してある程度手を差し伸べられないかと、外国人による家事支援ですね。これも国家戦略特区を使って神奈川県から提案をいたしました。そしていろんな事業者が選ばれて、今、もうその第1期が入ってきているところですね。 こういったことによって、女性の家事支援といったお手伝いをするということ、さまざまなことによって、女性が子育てしやすい環境をつくるということ。子育てしやすい環境だったら、じゃ安心して子供を産みましょう、ということにもなるだろうということによって、(将来の)人口減少に何とかして歯止めをかけたいなと思っているところなのです。
今のままでは国民皆保険制度維持できない
── 女性の就業状況のM字カーブのくぼみが深い。人口減少を考えたとき、出生率の上昇と働き方の両立、女性の輝きというところで神奈川県は仕掛けを始めているところですが、地道に続けなければならない取り組みですね。もう1点、神奈川県では、人口が増える中で起こったこと、高度成長期に大量に生産労働人口の世代が入ってきたことによって、高齢化が進行している面、課題もあるかと思うのですが、そちらについての取り組みの部分についてはどうでしょうか。 神奈川県の人口の形、1970年の人口の形を見ますときれいなピラミッドなのです。一番上、85歳以上という方が、今から思えば不思議なぐらい、あまりいらっしゃらないです。ほんのわずかです。ところが、2050年の人口の形を見ると、びっくりするのは全く逆になっているのです。85歳以上が一番多くなるという、それぐらいの圧倒的な超高齢社会ですね。そして、この進み方が、神奈川県は全国でもトップクラスに速いのです[グラフ3]。 ですから、今のままでいると、これは大変なことになる。つまり医療が崩壊するということですね。高齢者になると、病気になりがちとか、介護が必要になりがちといったこと。これが当然だし、仕方がないなと言っていれば、病院は機能を果たせなくなります。こんなに大量の高齢者がいらっしゃる中で、皆さんが病院に押しかけたら、病院は人を治す機能を果たせない。 しかも世界に冠たる国民皆保険制度というのがありますね。保険証1枚あったらいつでも誰でも、どこでも高度な医療が受けられるという。ところがそういう制度だって維持することは多分できないだろうということですね。ですから、この問題に対して我々は大変な危機感をもって今対応を始めているところです。 ※黒岩祐治・神奈川県知事に聞く(全文2)に続く