中国ラオス鉄道開通で観光ブーム 古都の静寂壊されるとの声も
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【3月14日 AFP】ラオスの古都ルアンプラバン(Luang Prabang)。夜明けとともに黄色のけさを着たはだしの僧侶たちが托鉢(たくはつ)に出る。カメラを握り締めた大勢の観光客が、早朝の厳格な雰囲気を打ち破る。 国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)に登録されているルアンプラバンには、昨年1~9月に80万人近くが訪れた。国営メディアによると、ルアンプラバンは2024年末までに300万人の観光客を誘致する目標を掲げている。 政府は観光業に力を入れているが、地元の人たちは静かだった街が団体観光客に占領され、文化が変わってしまうと懸念している。 朝の托鉢はかつて、仏教徒の住民と僧侶の間で粛々と行われていた習慣だった。しかし、今では僧侶たちはプラスチック製の椅子に座る数百人の観光客と、携帯電話を目の前に突き出してくるツアーガイドの間を歩かなければならなくなっている。 ルアンプラバンでは、朝の托鉢を見学する外国人観光客は以前から大勢いた。しかし、いまでは托鉢は写真撮影会のようになってしまったと住民は嘆く。 「何も買わずに写真を撮りまくっている」と、30歳の物売りの女性は不満を漏らした。 だが、もち米が入った喜捨セットを1個5万キープ(約360円)で販売する女性にとって、まったく観光客が来ないのも問題だ。 「観光客が来なければ、売り上げもなくなってしまう」「観光客が来れば来るほど、私たちの生活も変わってしまう。もはやカオスだ」 ■一帯一路の鉄道開設 ルアンプラバンは、中国が進める「一帯一路(Belt and Road)」の下で敷設された高速鉄道の開業で観光客が急増し、外国からの投資も流入している。 昨年開業した駅と街を結ぶ公共バスはない。ぼろぼろの舗装道路に白いミニバンが6列に止まっている。駅の表示はすべて中国語で、ターゲットにしている層は明らかだ。 中国の重慶(Chongqing)から到着した団体旅行客の一人はAFPに対し、「ラオスはこれから発展するだろう。特に習近平(Xi Jinping)国家主席による一帯一路が経済に寄与する」と語った。 中国が60億ドル(約8900億円)を投じた高速鉄道は、中国の昆明(Kunming)からラオスの首都ビエンチャンを結ぶ。ラオスが中国から多額の借り入れをして進める数あるプロジェクトの一つだ。 両国首脳は、鉄道の開通はラオスに恩恵をもたらすと強調したが、地元の人々は言われていたような利益はほぼもたらされていないと口をそろえる。 中国人の団体旅行客は、中国人が所有するホテルに宿泊し、中国人が経営するレストランで食事をし、中国人の所有する車で移動する。 タクシー運転手の男性(37)は、自分が若い頃は欧州からの観光客が多かったが、今はアジアからの旅行者が増えたと話す。 団体旅行が増えたことも、観光を変化させている。静かに日没を眺めるメコン(Mekong)川のサンセットクルーズは、ポップ音楽が鳴り響き、客がカラオケに興じる騒々しいパーティーに変わった。 早朝の通りに目を戻すと、托鉢に参加する中国人、韓国人、日本人であふれていた。欧州の言語を話す人は少なかった。 若いラオス人の女性が、僧侶の顔の目の前に携帯電話をかざして写真を取ろうとしていた男性を追い払っていた。「僧侶に近づかないよう、観光客にいつも言わなければならない」と話した。「観光客がたくさん来るのはいいけど、写真をたくさん撮ったり、声高に要求を突き付けてくるのは好きではない」 映像は1月に撮影。(c)AFPBB News