【闘病】乳がんは「検査ミス」により運よく発見できた 全摘した右胸に再発のまさか
予防のため、がんのない左胸も全摘
編集部: 実際の治療はどのように進められましたか? マクドゥエル さん: 左右両方の乳房を全摘した後、ホルモン療法を行いました。ホルモン剤は、最初のタモキシフェンから、途中でより強いホルモン抑制剤のアナストロゾールに変えました。全摘手術の時、再建手術に備えて皮膚を広げるティッシュ・エキスパンダーを両胸に入れました。 エキスパンダーを徐々に膨らませて、胸の皮膚を広げていくのです。2019年に再建手術を受けた時は何も問題がなかったのですが、2回目は胸の中のエキスパンダーの違和感がひどくて夜眠れないこともありました。 編集部: その後はどうしたのですか? マクドゥエル さん: 手術の3か月後に左胸のティッシュ・エキスパンダーを挿入した部分に感染が起こり、これを取り除く手術を受けました。 医師からは「6か月後にエキスパンダーを再挿入する手術、さらに6か月後に再建手術をします」と言われましたが、手術のたびに体力が低下し、コロナ感染や胃腸障害、長引く咳などの症状が起こっていたため、手術はもう受けたくありませんでした。 またティッシュ・エキスパンダーを挿入している間は、歯のクリーニングや治療を禁じられていたり、MRIを受けることができなかったり、体のほかの部分のメンテナンスや検査が制限されていたりしたのも不安でした。 乳房を再建しても、また10年以内に入れ替え手術が必要になるので、「再建しなくても良いのでは?」と思い始めました。 編集部: 悩む気持ちもお察しします。 マクドゥエル さん: 以前インプラントが入っていた時は、豊かな胸が気に入っていましたが、50代も終盤になり、大きな胸はもう自分には必要ないと思いました。夫も胸がなくても特に気にしないと言ってくれたので、再建手術はもう受けないと決めました。 その4か月後、残っていた右側のエキスパンダーも取り除く手術を受けました。この決断はかなり迷いました。 アメリカでは、全摘手術には当然のように再建手術が組み込まれています。がん告知を受けて動揺している時は、本当に再建が必要なのか考える余裕はなく、医師に言われるままに再建手術を承諾しました。 でも今後の人生において、豊かな胸を持つことの優先順位はかなり低く、それよりも再建手術に伴う時間や苦痛、ストレスを避けたいと考えました。 エキスパンダーを取り除いた胸、特に2回も全摘した右胸は大きくえぐれて、乳首も取り除かれ、傷だらけで、かなりグロテスクな見た目です。 それでも恥ずかしいとは思いませんし、自分の選択に後悔はしていません。むしろ、私ががんと戦った証として誇りに思っています。 編集部: 何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。 マクドゥエル さん: アメリカでは、両胸を全摘しても日帰り手術で対応し、入院させてもらえません。当日病院に行き、1時間半後くらいに手術が始まり、麻酔から覚醒後1時間くらいで帰宅させられます。 両胸から排液を貯めるドレーンチューブが挿入された状態で帰宅し、自分でドレーンに溜まった液を絞り出し、その量を記録します。 ドレーンからの排出液が1日20ml以下になったら、形成外科医のクリニックに行ってドレーンチューブを抜いてもらうことになっています。痛み止めや抗生物質も自分で管理して決まった時間に飲まなければならず、うっかり飲み忘れることもありました。 編集部: それは日本の環境だとあまり想定できない経験ですね。 マクドゥエル さん: 「入院できたらどんなに楽だろう」とも思いましたが、早くから普通の生活に戻れるというメリットもありました。 在宅で仕事ができたので、術後3日目から自宅ベッドで仕事を始め、手術の2週間後、ドレーンが抜けてまだ3日しかたっていなかった時期に、4日間に及ぶ大きな仕事(大学図書館でフルタイムで働きながら、大学院博士課程にも在籍しています)を仕切りました。 入院なしの自宅療養は大変でしたが、いつまでも病気を引きずらず、早く通常生活に戻って前向きな気持ちになれたのは良かったと思います。