【アイスホッケー】「いつも、自分を信じること」。伊藤崇之(東北フリーブレイズ)と古川駿(横浜グリッツ)の才能。(後編)
2023年の4月にフリーブレイズを退団した古川は、FAの交渉期間が解禁されると、横浜グリッツとの話し合いに臨んだ。そして正式に移籍が決定する。 ただ、新しい生活を始めて間もないこともあったのだろう、古川は夏場のプレシーズンゲームでも調子が上がってこなかった。 「バックス戦もひどかったし、延世大戦(韓国)も失点してしまった。グリッツでは、なにせ僕は新入りですから」 伊藤が10月にチャンスをつかんだように、古川も10月になって試合に使われるようになった。10月1日のアイスバックス戦が、古川の「開幕日」。0対3で敗れはしたが、翌週の霧降アイスアリーナの試合では勝ち点1を拾った。そして10月15日のフリーブレイズ戦でも先発起用を勝ち取り、しかし伊藤の前に敗れている。 「あの日は試合をやるのが楽しみでした。タカは、ずいぶんリラックスして試合に臨むようになったと思います。一番変わったと思うのは、プレーの読み。これまでのタカは、きれいな形で守るイメージだったんですが、今はどこが危ないのか、きちんと状況を把握して守るようになったと思います」 そして「あらためて、フリーブレイズは強いチームだ」と思ったという。 「これまでフリブレは味方でしたが、走って、当たって、シンプルなホッケーをする。それと、安定感のある守り。今のままじゃ、やられるよなって率直に思いました」 古川のコンディションもようやく上向きになったのだろう、11月に入るとアニャンにアウェイで初白星(11月19日)。12月3日には、レッドイーグルス北海道にグリッツ創設以来の初勝利をもたらした。ちなみに伊藤とは1月13日にも対戦して、4-6と2連敗している。 「グリッツのメンバーも年々そろってきていますし、強いとも思います。でも1試合を通して、本当に安定して自分たちのホッケーができるかといったら、どうでしょうか。いい試合をしても最後まで勝ちきれない。そこはチームとしての意識づけが必要でしょうね。守りでも、トークする場面が少ないんです。熊谷豪士さん(DF)が「声をもっと出そうぜ」と言ってくれて、だいぶ良くなっていると思うんですが」 グリッツは今季のアジアリーグで、すでに最下位の5位が決まっている。 「巻き返しのカギになるもの、ですか? それはゴーリーの僕です。チームを全部支えてやるっていうくらい責任は重いものがある。グリッツがここまで勝ち切れないのは、僕のせいだと言っていいと思います」