【特集|能登半島地震1年②】費用負担は・・・液状化対策の現在地、天野地区のいま【新潟・江南区】
能登半島地震から1年を迎えた『被災地の今を』シリーズでお伝えします。 2回目は、新潟市の液状化対策です。 市は、地域一体となった地盤改良を目指していますが、1年間の取材で見えてきたのは〝行政と被災者の間にある隔たり〟でした。 【動画】【特集|能登半島地震1年②】費用負担は・・・液状化対策の現在地、天野地区のいま【新潟・江南区】 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 新潟市江南区で被災した増田進さん。約350世帯が暮らす天野中前川原自治会の会長です。 ■天野中前川原自治会会長 増田進さん 「新しい年を迎えられて、これからまた色々と頑張っていきたい。明るく楽しい一年にしたいです。」 自宅近くの神社、参拝するのは初めてだと言います。 ■天野中前川原自治会会長 増田進さん 「地元の神社にお参りをして、今後、安心安全な地域になるようにお願いした。」 天野地区は、江戸時代の中頃まで信濃川が流れていた旧河道。液状化のリスクが高いとされる地盤で、今後、大地震が起これば再び液状化する可能性が高いとされます。 地震発生からの1年- 増田さんは、地域一体の液状化対策実現を求め続けました。 ■天野中前川原自治会会長 増田進さん 「果たしてこの地域は安全で安心で住み続けられる街なのか?今度(地震が)来た時に被害が出ないように、自治会長としてなんとか手を打ちたい、打っていきたい。私たちの子ども・孫も、安心して未来永劫に住み続けられる地域にしていきたい。自治会長として決意と覚悟を持っています。皆さんの協力をお願いします。」 液状化対策は、2007年の中越沖地震で液状化の被害を受けた柏崎市の山本団地や、熊本市・札幌市など各地に成功事例があります。それぞれに共通するのは『地域一体で地盤改良をしたこと』。液状化対策は一定の範囲をまとめて実施することで、高い効果が得られます。 しかし、対象地域の住民の合意が必要になるため、対策が進まなかったケースもあります。 増田さんは、今後求められる住民合意に向け、アンケート調査に乗り出しました。 ■天野中前川原自治会会長 増田進さん 「なんとか(液状化対策を)やってもらいたいのが、皆さん本音だと思う。これでまた地震がきたらというのもあるので、皆さんの考え方を聞きたい。それを踏まえて(行政に)要望などをしていきたい。」 新潟市は現在、西区や江南区の被害が大きかった地域で、液状化対策に向けた地盤調査を進めています。5月までに終わらせ、夏をメドに対策可能なエリアや工法を住民に示すとしています。 その後、住民は対策工事に合意するかどうかの判断を迫らせますが、大きな課題と見られるのが…住民負担。 過去に液状化対策を実施した柏崎市の山本団地では、一世帯平均で約70万円の負担が求められました。 ■天野中前川原自治会会長 増田進さん 「高齢化しているので、自己負担は難しい部分がある。それがクリアされれば、全体の同意も前向きに捉えてもらえると思う。」 住民に負担が求められる理由ついて、新潟市はー ■新潟市 栁田芳広技監 「私有財産である宅地に限定的に効果が及ぶ事業のため、施工する住民に自己負担をお願いする考えは妥当。」 対策の効果が及ぶ宅地は私有財産であるため、公共事業の受益者である住民に負担を求めるのは妥当との説明です。しかし、過去に液状化対策を実施した熊本市や札幌市は、住民負担を求めませんでした。地域一体の液状化対策は、宅地に隣接する道路や公園などの公共施設も地盤改良が必要なことから「公共施設を守る」という考えで宅地への対策を全額公費で賄いました。 ■新潟市 栁田芳広技監 「住民に負担を求めていない自治体があると承知しているが、各都市の被災状況で対応方法・進め方が異なることはご理解いただきたい。」 アンケートは246世帯に配布し、回答があったのは139世帯。焦点は、住民負担に対する考えを確認することでした。 ■天野中前川原自治会会長 増田進さん 「おそらく偽らざるお気持ちだと思う。ここまで強く液状化対策を希望している。アンケートを取って改めて自己負担が大きなネックになる。やはり、何としてでも(住民負担なし)の方向に向かって、関係機関の方で頑張っていただければなと思う。色々大変なのは分かっているんですけど。」 最終的な集計で、液状化対策に合意する住民は80%。住民負担なしを求める人は、72%あまりでした。 2024年12月17日、増田さんは新潟市の野島副市長と面会し、アンケートをもとにした要望書を提出しました。 ■天野中前川原自治会会長 増田進さん 「液状化対策を早期にお願いしたい。(液状化)しやすい地域だったことを全く知らなかったのが事実、ただし!非常に良い所です。私は天野を離れるつもりはございません。終の棲家として選んだ以上は、孫子の世代に安全・安心な地域として引き継ぎたい。これは私の強い思いですので、どうかご理解をいただきたい。個人の経費負担についても、特段のご配慮をお願いしたい。」 ■新潟市 野島晶子副市長 「受益者負担という基本的な考え方の中で、幾ばくかの負担をしてもらうのは基本的な考え方。それを国・市・住民の負担割合はこれからの検討事項、皆様のご意見をいただきながら進めていきたい。」 ■天野中前川原自治会会長 増田進さん 「(Q.増田さんを突き動かすものは?)なんでしょうね…なんでしょうね…あの~私自身が被災したと言う部分ではない部分があると思う。困っている人がいれば助けてあげたいと言うのは、人として当たり前のことをやっていると思っている。」 増田さんは、元警察官です。 ■天野中前川原自治会会長 増田進さん 「現場が多かったですね。パトカーやったり、交番とか駐在所とか、いつも第一線で地域の人と関わる仕事をやっていました。」 天野地区では、1月7日からボーリング調査が始まりました。 ■天野中前川原自治会会長 増田進さん 「やっとここまで来た。たどり着いたという気持ち。声をあげ続け、お願いをし続け、住民に協力をお願いしながら、また一歩一歩前に進めていきたい、進めてもらいたいと思っている。」