初のシャッフル公演となる『A3!』ほか 染谷俊之、今秋出演作品を語り尽くす
俳優、声優、YouTuberとして幅広いフィールドで活躍中の染谷俊之の魅力に迫るWEBザテレビジョンの連載「月刊染谷WEBマガジン」。毎月、深掘りインタビューを敢行し、仕事の近況からプライベートまで、事務所NGギリギリの質問をぶつけて“染様(染谷俊之の愛称)”を丸裸にします。第33回はこの秋に出演する舞台・映画について、見どころや裏話を聞きました。 【写真】出演する作品「MANKAI STAGE『A3!』」や「シンペイ~歌こそすべて」、「あいつが上手で下手が僕で ─人生芸夢篇─」について語る染谷俊之 ■エーステ最新公演では最終日の劇中劇に出演 ──MANKAI STAGE『A3!』の最新公演『Four Seasons LIVE 2024』が、10月31日(木)~11月4日(月)まで東京ガーデンシアターで上演されます。今回はどういった内容でしょうか? 春・夏・秋・冬の各組の全メンバー24人が出演するのですが、組の垣根を越えてメンバーをシャッフルし、いろいろな組み合わせで4人ずつのチームを作って劇中劇を行います。今年4~5月の春公演(ACT2!~WINTER 2024)で植田圭輔くんが卒業して、その役(冬組・御影 密)を今回から木津つばさくんが演じることになり、彼が主演の劇中劇があります。それに僕(春組・卯木千景)は準主演で出ます。その他のメンバーは新(しん) 正俊くん(夏組・兵頭九門)と中村太郎くん(秋組・兵頭十座)です。 ──他の組のメンバーと共演するのは新鮮ですね。 僕はこれまで春組と冬組の公演にしか出たことがないので、夏組の新くん・秋組の中村くんと同じ舞台に立つのは今回が初めてです。つばさとは普段から仲よくしているのですが、彼にとってはエーステ(A3!)の初舞台になるので、そんな3人と共演するのが楽しみです。 ──メンバーそれぞれの印象は? 新くんは僕と同じで、途中からエーステに参加している新メンバーです。以前、雑誌の取材で一緒になったことがあって、そんなにたくさんお話はできなかったんですが、すごく可愛くていい子でした。 中村くんは普段「太郎」と呼んでいます。過去に共演したことはないですが、知り合いなんですよ。コロナ禍に某オンラインゲームが流行っていて、僕もハマっていました。そのゲームのオンライン上に赤澤 燈(俳優)が太郎を連れてきて、リモートで一緒にプレイしたのがきっかけです。そんな関係なので共演するのはもちろん、役者としての彼を実はまだ見たことがありません(笑)。普段の太郎は体育会系で先輩を立ててくれる好青年です。 つばさは他の現場でもちょくちょく一緒になることがあるんですが、お芝居に対して器用で熱量があって、さらに愛嬌もある子。お仕事がひっきりなしなのが頷けます。普段はユーモアがあって、僕が大好きな後輩の1人です。 ──『Four Seasons LIVE 2024』の見どころをお願いします。 エーステは劇中劇に至るまでのストーリーも見どころなので、そこも楽しんでほしいです。劇中劇以外のシーンは、すべての回にメンバー全員が出演します。なので豪華なステージになると思います。そしてやはり劇中劇に注目してほしいですね。新くん&太郎と一緒にやることもそうですし、つばさが新しい御影 密をどう演じるのかも、僕自身楽しみです。劇中劇は全部で6公演ありますが、僕らが出演する第六回ミックス公演『Scarlet Mirror』は最終日(11月4日<月>)。ラストにふさわしい素敵な劇を届けたいと思っています。 ■映画では実在の俳優役に。「演劇に殺陣を採り入れた偉大な方です」 ──続いて、出演する映画『シンペイ~歌こそすべて』が11月22日(金)から長野県で先行ロードショーされます(一般公開は2025年1月10日<金>から)。どんな作品でしょうか? 実在した作曲家・中山晋平さん(1887-1952年)の生涯を描いた作品です。中山さんは童話や歌謡曲から、民謡、音頭、校歌・社歌まで幅広いジャンルの曲を実に2,000曲近くも残された方です。『シャボン玉』や『東京行進曲』『東京音頭』など、今でも歌い継がれている曲がたくさんあります。 ──中山晋平役を演じる歌舞伎俳優の中村橋之助さんが主演ですが、染谷さんはどんな役どころでしょうか? 僕は澤田正二郎(しょうじろう/1892-1929年)という、大正から昭和初期に活躍された大衆演劇役者の役です。正二郎は実際にものすごく人気があった役者さんで、「新国劇」という劇団も立ち上げて、演劇に初めて殺陣を採り入れた方です。まさに今、僕はよく舞台で殺陣をやらせてもらっていますが、その元祖の方を演じる機会をいただけてすごく光栄です。36歳の若さで亡くなっていて、ちょうど今僕も同じ年齢ということもあり何か運命を感じています。 ──役作りで意識したことはありましたか? 劇中で正二郎の性格が分かるような描写は特になかったんですが、撮影に入る前に文献などを読んで、どんな方だったのかは調べました。すごく頭が良くて、エリートだったようです。丸メガネがトレードマークなので、撮影は同じ形のメガネをかけて、髪型も当時のスタイルに寄せました。今の演劇の基礎を作ったといっても過言ではなく、実在した偉大な方を演じるのは同じ俳優として相当な覚悟が必要でしたし、失礼があってはいけないので撮影の前後にお墓参りもさせていただきました。 ──正二郎はストーリーにどう絡んでいくのですか? 僕の出演シーンはけっこう限られているんですが、緒方直人さんが演じる島村抱月(ほうげつ/劇作家・評論家。1871-1918年)を師と仰いでいて、彼が演出する作品に役者として出演することになり、抱月がその作品の劇中歌を晋平に依頼するシーンなどに登場します。 ──中村橋之助さん・緒方直人さんは共に初共演ですか? そうです。僕と橋之助さんと緒方さんが同じ控室で1時間くらい待機することがあったんですが、お二方ともすごく気さくに接してくれて、めちゃくちゃ楽しい時間でした。橋之助さんはまだお若い(28歳)ですが、立ち居振る舞いが凛とされていて、さすが歌舞伎役者さんという感じでした。緒方さんもすごい俳優さんなのに、いろいろ話かけてくださって、本当に素敵な方でした。お父様も超がつくくらい有名な俳優さん(故・緒方 拳)でしたが、劇団「新国劇」のご出身だそうで、改めて澤田正二郎さんの偉大さを感じました。 ──ではこちらの作品も見どころをお願いします。 大正・昭和初期はいろいろなものが移り変わったり、戦争があったりとすごく激動な時代ですが、当時の作曲家さんをフィーチャーした作品はこれまであまりなかったと思います。『シャボン玉』や『てるてる坊主』など、誰もが知っている曲を作った方の生涯を描くということだけでかなり見どころがあるので、純粋に作品を楽しんでもらいたいです。 ■カミシモ最新舞台ではラストワルツの漫才がまた見られる!? ──最後は舞台『あいつが上手で下手が僕で ─人生芸夢篇─』(11月15日<金>~21日<木>・日本青年館ホール)について。その前にドラマ版『─巡巡決勝篇─』(2024年7~9月放送)では、ついにラストワルツの元メンバーが明らかになりました。まさかの植田圭輔さんでしたね! 僕と(相方役の和田)琢磨くんはずいぶん前から知っていました。エーステの冬公演(2024年4~5月)の時ですね。植ちゃんから「実はオファーが来てるんだけど」という相談を受けていました。 ──ということは、以前のインタビュー(第31回・染谷俊之『カミシモ3』の意気込みを語る「原作がないコメディ作品なので、僕自身楽しんで演じている 」2024年7月17日公開)の時はすでに知っていたのですね。すっかり騙されました! すみません、ネタバレになっちゃうので知らないフリをしていました(笑)。植ちゃん本人はちょうど忙しい時期だったみたいで、オファーを受けるか悩んでいたんですが「いや、絶対に出よう!」と琢磨くんと一緒に説得しました。エーステの冬公演でも3人組を演じていて、また別の作品で3人組を演じる機会はなかなかないことなので面白くなると思いました。 ──3人が絡んだ最終話は見ごたえがあり、染谷さん演じる高砂真夜もいつも以上のハイテンションでした。 実は撮影の日、朝からあまり体調が良くなかったんです。そんな万全な状態ではない中で、高砂を演じるのはめちゃくちゃ大変でした。自分の大きな声で頭が痛くなるくらいだったんですが、もちろん集中して演じました。尺の問題で仕方がないことですが、オンエアを見たらけっこうカットされていて悲しかったですね(笑)。もっと面白いシーンがたくさんあったんですよ。でも過去に3人の間で何があったのかはしっかり描かれていたので満足です。 ──ストーリーとしては、お笑いの賞レース「パチファン(38<サンパチ>ファンタジスタ)」において、ラストワルツが見事に準決勝進出を決めました。『─人生芸夢篇─』ではその続きが描かれるのでしょうか? どうなんですかね。まだ台本をもらっていない(※注1)ので分からないです。「パチファン」の準決勝をやるのか、それとも…。というか、カミシモってストーリーがないものだと僕はずっと思っていました。でも前回の舞台(2024年5月)を見て、めちゃくちゃストーリーがあってビックリしました(笑)。なので今回どうなっていくのか、僕自身もワクワクしています。舞台ということで漫才のネタは実際にやると思うので、観客のみなさんをしっかり笑わせたいですね。 ※注1:インタビューは2024年9月中旬に行いました 取材・文=河合哲治郎