安達祐実の覚醒っぷりが凄まじい…初回から脚本のクオリティに驚かされたワケ。NHKドラマ『3000万』第1話考察
NHKが新しい制作手法を取り入れ誕生した土曜ドラマ『3000万』(よる10時放送)。10月5日より放送が開始された本作は、NHKが新たに立ち上げた脚本開発に特化したチーム“WDRプロジェクト”によって制作され、主演は安達祐実、共演を青木崇高が務める。今回は、第1話の物語を振り返るレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】安達祐実ら、実力派俳優の貴重な未公開写真はこちら。ドラマ 『3000万』劇中カット一覧
脚本開発チームWDRプロジェクトによるクライムサスペンス
もしも3000万が入ったカバンを拾ったら、きっと多くの人が交番に届けると回答するだろう。だけど、もし持ち主が取り返しに来る可能性が低く、拾った場面を誰も見ていなかったとしたら? 魔が差してしまう場合もなくはないのかもしれない。 『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)での好演も記憶に新しい安達祐実が主演を務める秋ドラマ『3000万』(NHK総合)が10月5日にスタートした。本作は、“脚本開発チーム”WDRプロジェクトから生まれたクライムサスペンスで、平凡な家族がほんの少しだけ幸せな生活を求めた結果、泥沼にハマっていく姿を描く。 WDRとはWriters' Development Roomの略で、2022年にNHKが開設した「脚本開発に特化したチーム」のこと。複数の脚本家が「ライターズルーム」という場に集い、共同執筆する海外の手法を取り入れる形でメンバーの募集が始まり、応募者2000人以上の中から脚本家10人が選出された。 その後、10人は連続ドラマの第1話を19本仕上げて一度解散。そしてその中から『3000万』の制作が決まり、再び収集されたメンバーでライターズルームが結成された。弥重早希子、名嘉友美、山口智之、松井周ら選ばれた4人は全8話を順番に手がけていくという。
視聴者を飽きさせないテンポの良さと先の読めない展開
トップバッターを飾るのは、本作のパイロット版を仕上げた弥重だ。弥重はこのドラマが商業デビュー作となるが、初回の放送ではその才能が光り輝いていた。 まず特筆すべきは、視聴者を飽きさせないテンポの良さと先の読めない展開。物語はコールセンターの派遣社員として働く妻・祐子(安達祐実)と元ミュージシャンの夫・義光(青木崇高)の夫婦が、ピアノの発表会を終えた一人息子・純一(味元耀大)を載せた車でバイクと衝突すれすれの事故を起こすところから始まる。 事故の相手は意識不明の重体だが、幸いにも夫婦に過失はなく一安心...と思いきや、純一が相手の所持していたカバンを家に持ち帰っていたことに気づく祐子。その中に入っていたのは、3000万の札束だった。 当然すぐ警察に届け出ようとする祐子と義光だったが、盗みを疑われたらと思うとなかなか言い出せない。時間が経つにつれ、どんどん返しづらくなってしまい、そのうち「バレなければこのまま自分たちのものにしていいのでは」と魔が差し始める。 しかし、警察の取り調べで相手の乗っていたバイクが強盗事件の逃走に使われたバイクと同じであることが判明。怖くなった祐子は義光とともに事故の現場にカバンを置いてこようとするが、そこで怪しい男2人に絡まれるのだった。 そこから夫婦が危機を脱し、3000万を自分たちのものにすると決意するところまでノンストップで進んでいく。 さらにはラストで事故の相手が意識を取り戻す描写もあり、普通なら2~3話かけて描く展開を約50分に詰め込む大胆さに驚かされた。「次はこうくるだろう」という視聴者の予想を裏切る展開も多く、まったく先が読めない。