細けぇこたぁいいんだよ! 『アルマゲドン』開き直って楽しみたいそのツッコミどころ
目をつぶろうとしても飛び込んでくる数々のツッコミどころ
1998年に公開された映画『アルマゲドン』は、日本でも興行収入84億円近く、年間1位を獲得した大ヒット作です。それだけ多くの人々が感動したはずですが、いまでは褒めることがはばかられるような風潮となっています。ソフトに言えば「科学考証がアバウトすぎる」ためです。 【画像】これぞマイケル・ベイ監督の醍醐味! な爆発シーンほか『アルマゲドン』の名シーンを振り返る!(6枚) そのあらすじは、人類に破滅をもたらす小惑星が地球に迫るなか、石油採掘のプロたちがこれに核爆弾を埋め込むため宇宙へ飛ぶというものです。監督はマイケル・ベイであり、ブルース・ウィリス、ベン・アフレックといった名優をそろえ、莫大な予算をかけた画面作りもリッチでドラマも山あり谷あり、堂々たるハリウッド映画となっていました。 エンタメ作品は面白さが最優先であり、たいてい細かい矛盾には目をつぶれます、が、『アルマゲドン』は一つひとつのツッコミどころが大きく、かつ多すぎるため、つぶった目をこじ開けて入ってくるのでしょう。150分の上映時間のうち、168か所の科学的な間違いがあるとの説もあるほどです。 序盤から、ウィリス演じる「ハリー」が、娘の「グレース」に手を出した部下の「A.J」に散弾銃を撃ちまくります。そこは海上の石油採掘現場です、地球が滅びる前に、ハリーの会社が社員ごと滅びそうです そもそも小惑星はテキサス州並み、直径1200kmの超大型ですが、見つかったのは地球衝突まで18日前のことです。発見したのがNASAではなくアマチュア天文家ということも、石油採掘作業員をわずか12日の訓練でスペースシャトルに乗せる決断の前にはかすんでしまうでしょう。ちなみに、JAXA宇宙飛行士は基礎訓練だけで約2年をかけるそうです。 さらにスペースシャトル2機が時速3万5000kmで飛ぶ小惑星(地球の重力で加速し続けているはず)に背後から追いつき、小惑星からの無数の岩石を自由自在に避けまくり、うち1機はその直撃により真空の宇宙空間で騒々しく音を立てて火を噴いていました。 ほか、直径1200kmもある小惑星を240m掘って核爆弾を埋めても、壊すの無理じゃない? 核爆弾も少なすぎるよね? 地球に近づいた地点で爆破しても衝突コースをそれず「割れた小惑星が激突」するだけでは……これ以上ツッコムと「だったら、割りに行くなよ!」になるので控えます。 いろいろとアラが目立つことは、ベイ監督ご本人が認めています。たった16週間で作らなくてはいけなかったそうで、たった12日間で宇宙に放り出されたハリーたちと近い境遇だったようです。 それでも、『アルマゲドン』はいまなお色褪せない輝きを放っています。たとえば、小惑星から多くの隕石がパリ市街に次々と落ちてくる場面は、爆発がほぼ実写であり、CGでは味わえない火薬量が満喫できます。 さらにスペースシャトル登場のシーンでは、NASA全面協力のもと、本物を16台のカメラで撮影したゆえのド迫力です。スケジュールがないなか、ベイ監督の「映像的なリアル志向」(科学的ではなく)がさく裂しているのです。 ドラマ的には、仲間たちが力を合わせて苦難を乗り越え、ハリーの自己犠牲により地球が救われる胸アツぶりです。その悲しみを噛み締めながら、満面の笑顔でA.Jとグレースが結婚式を挙げるエンディングも最高! でも、小惑星では錯乱して機関銃を乱射し、作業の邪魔しかしてなかった「ロックハウンド」が生還するのはどうかと思います。 ※ ※ ※ 全国無料放送のBS12 トゥエルビは、「BS12 年またぎ映画祭」と題し、年末年始の12月28日から1月5日(日)の期間に、「ランボー」5作品、「劇場版『名探偵コナン』」3作品など人気映画15作を9日連続で放送します。映画『アルマゲドン』は12月30日(月)19時放送予定です。
多根清史