「光る君へ」紫式部が大宰府に向かうオリジナル展開の理由 50代を演じる吉高由里子は「落ち着いて声も低い印象」
まひろが大宰府を訪れたころには50代になっており、再会した周明に都を出た理由を問われた際、「もうわたしには何もない。これ以上あの人(道長)の役に立つことは何もないし、都にはわたしの居場所もないの。今は何かを書く気力もわかない。わたしはもう終わってしまったの。終わってしまったのにそれが認められないの」と胸中を明かしていた。内田は、人生の虚しさにとらわれるまひろには「源氏物語」が影響していると話す。
「この頃、まひろは「源氏物語」を書き終え、娘もほぼ手が離れた段階で、何をしたらいいのかわからなくなってしまっている。大宰府に発つ前、宇治での道長との邂逅では“もう命を終えてもいい”という話まで出ていました。そうした人生の虚しさは、実は「源氏物語」でも描かれているんです。「源氏物語」は光源氏の華やかな恋愛ばかり注目されがちですが、特に中盤以降は、周りの同年齢の人々が出家して仏門に入っていき、彼はこの後どう生きていったらいいのかと悩む。登場人物それぞれが実は自分は幸せではなかったのかもしれないと気づく。個人的には「源氏物語」で最も優れているのはそういったところなのではないかと思っています。まひろ、そして道長が同様の境地に至るというのは、深いところで「源氏物語」とシンクロしていることに気づいてくださったら嬉しいなと思っています」
2023年5月28日に平安神宮(京都市)でクランクインしてから約1半年。50代のまひろを演じる吉高の演技、変化について内田は「ご自分の実年齢を超えて、40代のまひろを演じられるようになってからは、自然にすごく落ち着いた感じにお見受けします」と印象を語る。
「道長がいつまでも政治的なことに囚われていて、迷い、葛藤し、感情的になったりしながら過ごしているのに対し、まひろは道長をはじめとする人々の辛さ、悲しさ、怒りを受け止める側になり、作家らしくなってきている。吉高さんのお芝居も、相手のお芝居に瞬発的に反応するというよりは、じっと聞いている眼差しがかすかに動くなど、表情が素晴らしいですね。成熟した印象で、声も低くされています。でもカットがかかった瞬間、元の天真爛漫な吉高さんに戻られます(笑)」
そして最終回の見どころについては「たくさんあります。まひろと道長が人生の終盤をどのように過ごすかというところなんですけれども、まひろの「源氏物語」が世の人にどういう影響を与えていくのかが描かれるところも1つの見どころではありますし、道長をはじめ政で争ってきた男たちが、それぞれの心の置きどころのようなものを見つけていくところも。あとは、“こう来るか!”というラストシーンになっていると思うので、最後まで目を離さないで観ていただければと思います」と語った。(編集部・石井百合子)