趣味は父の高級外車を乗り回し“推し活”…親の年金〈月25万円〉で気ままに暮らす“自称作家”53歳息子が血相を変えた、銀行からの「まさかの宣告」
マサキさんの身に起きた「想定外の出来事」
ある日の夕方、想定外の出来事がマサキさんを襲います。いつものように推し活に出かけるための軍資金を出金しようとATMに向かいますが、預かっている父名義のキャッシュカードが使えません。「暗証番号を間違えたわけではないし、おかしいな……」と思いましたが、すでに窓口は閉まっていたため、翌日、改めて銀行に問い合わせました。そこで、銀行の担当者から想定外の一言が。 「大変恐縮ですが、こちらのカードはお使いになれません」。 実はハジメさん、妻が亡くなった直後くらいから少しずつ認知機能の衰えが見られ始めます。聡明なハジメさんはそのことを自覚しており、80歳の誕生日を迎えた後、介護付き有料老人ホームに入居することに決めたそうです。立派な持ち家があり、無職同然の息子もいるため、自宅介護という選択肢がないわけではありませんでしたが、本人の希望により、早めに施設での生活を選択したそうです。 そして、同時期に成年後見制度を利用することに決めていたのです。
ハジメさんが利用した「成年後見制度」とは
成年後見制度は、認知症をはじめ、知的障害、精神障害などで判断能力が不十分な人に起こり得る不利益から本人を守るための制度です。 成年後見制度は次の2つに大別されます。 1.法定後見制度 すでに判断力が低下した人を対象にした制度です。本人、配偶者、四親等内の親族、市区町村長などの申し立てにより、家庭裁判所が選任した成年後見人によって本人の財産管理や身上管理を行います。本人の判断力によって、「後見」「補佐」「補助」の3つの分類があり、分類により手助けできる範囲が異なります。 2.任意後見制度 「任意後見制度」とは、本人に十分な判断能力があるうちに信頼できる人と任意後見契約を結ぶ制度です。 公証役場で公正証書を作成し法務局に登記する必要があります。本人の判断能力に不安が出てきた際に、任意後見監督人を家庭裁判所が選任します。これにより任意後見契約の効力が生じ、任意後見人が、法律行為を本人に代わり行います。なお、任意後見人の権限は任意後見契約の範囲内に限られます。 どちらの場合も後見人になれる人は、親族の他、弁護士、司法書士など法律の専門家、また、福祉法人などです。 ハジメさんは、これ以上自分の資産を息子のマサキさんに使い込まれることを危惧し、あらかじめ、任意後見制度で知人の弁護士と財産管理に関する任意後見契約を結んでいたのです。 老人ホームに入居して1年半が経過した頃、ハジメさんの認知機能が低下したため任意後見が開始されました。そのため、ハジメさん名義の預貯金を勝手に引き出すことはできない状態となっていたのです。 ハジメさんが亡くなり相続が開始されれば、いずれマサキさんにも十分な遺産が入るでしょう。しかし、当面はこれまでのように自由になる資金はありません。 まだ十分に働くことができるマサキさんです。考えを改め、親の資産に頼らず身の丈にあった暮らしをしていってくれることが父ハジメさんの最後の願いです。
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