なぜ西武・渡辺GMは古巣復帰した松坂大輔のノルマを「1、2勝」と低く設定したか?
優勝した今季のチーム防御率の4.35はリーグワースト。先発陣ではニールが12勝1敗、高橋光成が10勝6敗と健闘。ドラフト1位の新人、松本航も7勝4敗の結果を残し、本田圭佑も6勝6敗でローテーを守ったが、今井達也は防御率4点台で7勝9敗と負けが先行、十亀剣が5勝6敗、阪神からの移籍1年目に活躍した榎田大樹も4勝止まり、多和田真三郎もわずか1勝に終わるなどして先発は不安定だった。 松坂が食い込む余地はある。しかも、今井、松本、本田ら若手へのお手本として”現役コーチ”としての期待値が高い。そもそも西武には、選手同士が、互いに学びあい、刺激を受けあって、成長していくチーム内コーチングの土壌がある。 その上で渡辺GMは松坂のノルマをあえて低く設定した。 「何勝とかじゃなく、1勝、2勝でも、1軍で投げて戦力になって欲しい。1軍で西武のユニホームを着て投げている姿をファンの方にも見て欲しい」 中日で復活した昨年は、6勝4敗、防御率、3.74の数字を残したが、今季の先発はわずか2試合で0勝1敗。しかも、横浜DeNA戦では初回に8失点する滅多打ちを食らった。その影響で防御率は屈辱の16点台である。その状況から考えると、渡辺GMのノルマは、いたって現実的。ただ、松坂が間隔をあけながらもローテーの谷間を埋めて、それこそ1、2勝でもすれば、来年も想定されるソフトバンクとの1勝を争う熾烈なペナントレースの中では大きな意味を持つ。 しかも西武は12球団トップの強力打線。「カットボール」を現在のウイニングショットだと断言し、ボールを動かすピッチングスタイルに変わっている松坂は、相手をシャットアウトに抑え込む力のピッチングはできない。必ず点は失うが、援護射撃が計算できれば、ある程度の失点を頭に入れた余裕のある大胆な配球内容で、”最後にリードを許さない”という勝利に徹したピッチングをマネージメントできるのかもしれない。それだけの経験が松坂にはある。