高学歴なのに、任される仕事のレベルが低い…日本でオーバークオリフィケーションが起こる理由
「オーバー・クオリフィケーション(Over qualification)」とは、職務に求められる学歴よりも高い学歴を有していること。経済協力開発機構(OECD)らが2013年に実施した「国際成人力調査(PIAAC)」によると、日本のオーバー・クオリフィケーションは31%で、世界で最も高い結果となりました。仕事のレベルに対して学歴が高すぎるというミスマッチは、モチベーションの低下や早期離職のリスクなど、さまざまな問題を引き起こす可能性をはらんでいます。
日本社会で「ムダな学歴の高さ」が 発生してしまう構造的な理由
2013年、世界24の国・地域で初めて実施された「国際成人力調査」。16~65歳を対象に、「読解力」「数的思考力」「状況の変化に応じた問題解決能力」の三つの能力を測る調査です。 日本は、読解力と数的思考力で世界1位の数値となりました。一方、オーバー・クオリフィケーションを示す「就業者における学歴ミスマッチとスキルミスマッチの割合」も世界1位。ミスマッチの割合は31%で、日本人は読解力と数的思考力が他国より高いにもかかわらず、企業がその能力を生かしきれていない現状が浮き彫りになりました。 日本社会ではなぜ、オーバー・クオリフィケーションが発生してしまうのでしょうか。原因は、日本特有の新卒採用文化、メンバーシップ型という雇用慣行にあると考えられます。 新卒採用の文化からわかるように、日本では、入社後に仕事を覚えることが一般的です。米国に見られるジョブ型採用では、従業員を即戦力として迎え入れますが、日本では企業が従業員をじっくりと育てることを前提に採用。企業は、求職者のポテンシャルを評価するのです。過去の実績がない中で、入社後の活躍の可能性を探るには学歴がもっともらしい指標となり、オーバー・クオリフィケーションが発生してしまうのです。 一方、経団連が調査した企業が学生に求める資質では、1位が「主体性」、2位が「実行力」となっており、「専攻分野の専門的知識」は9位にとどまっています。 オーバー・クオリフィケーションの問題点は、仕事の難易度が合っていないことによる、モチベーションの低下や早期離職のリスクがあること。さらに、オーバー・クオリフィケーション状態にある人は、仕事と学歴がマッチしている人より、15%賃金が低いというデータがあります。 昨今は、日本でもジョブ型採用の機運が徐々に高まっていますが、単一的なキャリアパスだけでなく、個人の能力を生かせる柔軟な人事配置が問われています。