見えてきた「ラマポーザ政権の南アフリカ」のアイデンティティと国際社会での行動原理
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南アフリカ(南ア)では今年5月末の総選挙(国民議会選挙・400議席)で与党アフリカ民族会議(ANC)の議席が1994年の民主化後初めて過半数を下回り、 シリル・ラマポーザ大統領 はANCを軸に10政党から成る国民統一政府(Government of National Unity:GNU)を樹立した。だが、GNU発足からわずか3カ月にして、教育政策を巡ってGNU内の政党間対立が先鋭化し、政権は不安定化している。 外交面では、南アはパレスチナ自治区ガザへの攻撃を続けるイスラエルを国際司法裁判所に提訴するなど国際社会で存在感を示す一方、 ロシア・ウクライナ戦争 では「ロシア寄り」とみられる姿勢を取り続け、西側諸国を悩ませている。国内を見渡せば、15年にわたって事実上のゼロ成長が続き、失業率は30%を超える。アパルトヘイト(人種隔離)体制が崩壊した30年前、世界の人々の期待を背負って船出した南アはどこへ向かうのだろうか──。 民主化後7度目となる5月29日の総選挙におけるANCの獲得議席は159で、選挙前の230議席から大きく減少した。このためラマポーザ大統領は、87議席を獲得して第2党となった民主同盟(DA)をはじめとする各政党にGNUの結成を呼び掛け、GNUが7月3日に発足した。
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白戸圭一