日本政府の移民難民対策が謎すぎる、クルド人問題の根幹を雨宮処凛が語る
ロスジェネ世代を代表する作家・活動家の雨宮処凛。デビュー以来、貧困や格差問題を追い続け、07年に出版した『生きさせろ!難民化する若者たち』はJCJ賞を受賞、また、今年2月に刊行した社会保障を使いこなすコツや各種困りごとの相談先など、誰もが必要な情報を各々の専門家に取材してまとめた『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』は現在6刷のベストセラーとなるなど、精力的に執筆・活動を続けている。そんな雨宮氏の新刊は、今後、避けては通れない難民・移民問題をわかりやすく説明した『移民・難民のわたしたち これからの「共生」ガイド』(河出書房新社 『14歳の世渡り術』シリーズ)。なぜこの本を書こうと思ったのか、そして現場はどのような状況にあるのか。話を聞いた(前後編の後編)。>>前編は下の関連記事からご覧ください。 【写真】『移民・難民のわたしたち これからの「共生」ガイド』雨宮処凛著 日本で働く移民労働者は200万人を超えている。少子高齢化の日本社会で、すでに移民は働き手として欠かせない存在といってもいい。一方で難民申請中の外国人が働くには、就労を認められる『在留資格』が必要となる。かろうじて日本にはいられるものの働くことができない『仮放免』という判断が下されれば、就労はもちろんのこと健康保険証も持つことができず、生活保護も受けることができない。そんな状況で仮放免の立場である人々はどうやって暮らしているのか。また、どんな困難に直面しているのか。 「本書の中でも紹介しているんですが、トルコから9歳で日本にやってきたアリさん(仮名)という男性がいるんです。迫害を逃れて一足先に日本に渡っていた父親に続くかたちで母親と一緒に来日して、日本の学校に通い始めたんですが、最初は日本語もまったくわからずにクラスにも馴染めていなかった。 ところがある日、クラスメイトがサッカーに誘ってくれて、一気に皆と打ち解けることになったんです。サッカーもめきめきと上達し、いざ試合に出られるとなった時に、県外の大会への出場は無理だということが判明した。というのも、仮放免という立場では、県外への移動は入管の許可が必要なんです。今は少しは緩和されたらしいですが、当時はなかなか許可がでなかった。 仮放免では働くことも禁じられているので、入管に出頭した際には『スカウトが来たとしてもサッカー選手にはなれないよ』と何度も言われたらしいです。そんなの、わたしだったらグレて学校なんか行かなくなると思います。でも彼は『もっと認めてもらおう』とサッカーを辞めて学業に専念して、いい大学に見事に合格したんです。進学した彼が何を研究しているかというと『移民の1.5世』。 1.5世というのは、親に連れられて移住した人たちのことです。彼は将来は国連で難民の支援をしたいという希望を持っているんですが、ちょうどタイミングのいいことに、昨年末、アリさんの家族全員に在留資格が出た。ようやく県外移動も、アルバイトも就職もできるようになったんです。仮放免のままであれば、せっかく優秀で本人にやる気もあるのに、バイトすらできずに宙ぶらりん。優秀な人材を無駄にしていると思いませんか」