水沼貴史が語る 日本代表・岡崎慎司の存在意義
ニュージーランド代表との試合は、ザックジャパンにおけるFW岡崎慎司(マインツ)の存在価値の大きさを再認識させられた試合だったと言っても決して過言ではないだろう。MF本田圭佑(ACミラン)やMF香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)が大黒柱であることに異論はないし、DF長友佑都(インテル)も、もちろん欠かすことはできない。 しかし、攻守においてチームを機能させる点で、ザックジャパンの浮沈のカギを握るキーマンは岡崎となる。不動の背番号9に万が一のアクシデントがあった場合には、代役がいないという現状も、図らずも浮き彫りとなった。 左サイドから香川が放ったパスに飛び出し、先制点を奪った前半4分の場面を含めて、岡崎は右サイドからの斜め方向へのフリーランニングで相手の最終ラインの背後を取る動きを何度も見せていた。岡崎を形容する際に「泥臭い」という言葉がよく使われるが、対峙するDFにとっては、実は「泥臭い」プレーを繰り返されることが何よりも脅威となる。 いつ斜めに入って来られて、自分たちの背後を取られるのかを警戒し続けなければいけない。かといって岡崎の動きだけを見ていたら、肝心のボールを見失ってしまう。たったひとつのランニングで相手を困惑させ、心理的に優位に立つ状況を作り出すことができるわけだ。例え無駄走りに終わろうとも、岡崎はそうした動きを、労を惜しむことなく繰り返すことができる。ザックジャパンの攻撃は「左で崩して右で決める」傾向が顕著だが、これは2列目の右を主戦場としながら、ストライカーとしての矜持を常に持ち合わせる岡崎の存在を抜きには語れない。 対照的に「右で崩して左で決める」ケースが極めて少ない理由は、左サイドから相手の背後を取るフリーランニングで突破する形がない点に尽きる。香川に岡崎と同じ動きを求めるのはちょっときついかなというのはあるし、そもそもそういうタイプの選手でもない。