水沼貴史が語る 日本代表・岡崎慎司の存在意義
だが、逆の見方をすれば、岡崎がいなければ攻撃は行き詰まり、決定機すら作れなくなってしまう。後半開始と同時に、岡崎はMF清武弘嗣(ニュルンベルク)との交代でベンチに下がった。MF遠藤保仁(ガンバ大阪)も同時に投入され、メンバー個々の力量は前半よりもむしろ上がっていたにもかかわらず、相手ゴール前に迫る攻撃の推進力は生み出されなかった。 清武は基本的にパッサーであり、もちろん何度かフリーランニングを試みてはいたが、残念ながら相手の背後を取れる動きにはなり得なかった。後半のザックジャパンからは、どう攻めたらいいのか、といった逡巡が幾度となく伝わってきた。全体的に考え方が煮詰まっていたという印象を拭えなかった。 相手の最終ラインの背後を取るフリーランニングと、カウンターで一気に攻めるのとは似ているようで異なる。フリーランニングは、味方の選手たちがボールキープに長けていないとできない。その意味でザッケローニ監督体制となり、本田や香川が中盤に配置されたことで、堅守速攻を軸とした前回の南アフリカ大会のチームと比べて、岡崎の異能ぶりがより生かされる土壌が生まれた。 岡崎の存在がピッチ上の11人をチームとして機能させてきたわけだが、その存在感が大きくなりすぎた分だけ、不慮のけがや累積警告による出場停止となった場合のチーム力低下は避けられない状況をも生み出してしまった。 特に怖いのはけがだ。がむしゃらに頑張るタイプだけに、無理をしようとするし、実際に無理ができてしまう。前半4分の先制点の場面にしても、相手に体を入れられたら普通はあきらめてしまう場面で、体勢を崩しながらも無理やり右足を伸ばし、ボールをヒットした。 国際Aマッチにおける通算ゴール数を「38」に伸ばし、釜本邦茂さん、カズ(三浦知良)に次ぐ歴代3位に躍り出たのも必然と言えるし、6月のW杯本大会でも大きな仕事をしてくれるという期待も高まる。ニュージーランド戦でフル出場した本田のコンディションは決して万全ではなく、体も重そうだった。香川は試合に出たことはプラスになるし、得点も決めてすっきりした部分はあるとは思うけれども、90分間プレーできるゲーム体力はない。後半に入ると明らかにパフォーマンスは落ちていた。