88歳の父が他界。母も高齢なので私が相続手続きをするのですが、父親から預貯金・土地などの詳しい情報を聞いていません。どのように進めたらいいですか?
どなたかが亡くなると、必ず相続の問題が発生します。亡くなった方をしのんでいる間にも、相続手続きをどうするのか、という問題は起こります。戸籍集めや相続財産の把握、相続の方法など、決められた期間に行う必要があります。最近では以前と比較して、負担が軽減されています。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
以前より戸籍集めは楽に
以前は亡くなった方の戸籍集めに、大変な手間がかかりました。とくに本籍地が遠い場合などは苦労しました。最初の出生地や親の出生地が本籍になっていることが多く、その役所に照会をして戸籍を取り寄せる必要があります。 亡くなった方の本籍が、ずっと同じ場合は一度の手間で何とか手に入るのですが、結婚、転居などの理由で、本籍を移動させている場合は、追いかけて戸籍をすべて集める必要があります。 昭和の時代までは、親戚間で養子縁組をしたケースも多く、相続人の知らない人が養子に入っているケースもありました。戸籍謄本を取り寄せ、初めてこうした事実がわかれば、その人も相続人となります。 戸籍謄本は、相続人の確定や相続財産の配分のためには、必ず必要です。相続税の納付は、故人が死亡してから10ヶ月以内と定められています。死後の手続きに追われていると、あっという間にきてしまいます。 こうした手間のかかる作業を少しでも軽減できるように、国が2024年から運用を始めた制度が「戸籍証明書等の広域交付制度」です。このシステムは、全国の市区町村と法務省がネット回線でつながり、戸籍の入手が楽になりました。 相続人が居住地近くの市区町村の役場で戸籍謄本の交付を申請すれば、このシステムを利用することで、すべての戸籍をまとめて入手できるようになりました。これまでのように、戸籍のあるすべての市区町村と、手紙などのやり取りなどで数ヶ月かかっていた手続きが簡単になりました。
預貯金と有価証券をどう把握するか
故人の預貯金がどうであったかを把握するのは、本人が的確な情報を残していないと、かなり手間がかかります。このようなケースでは、本人名義の預金通帳やキャッシュカードを探すことが第一です。 もし自宅の金庫や金融機関の貸金庫の中に、こうした通帳などがあれば、かなりの預貯金額を把握できます。定期預金などの引き出しには、出生時からの戸籍謄本などが必要ですが、普通預金の引き出しには、さほど苦労はしません。相続人から見て、預貯金は最も配分しやすい財産になります。 もし通帳などが見つからない場合は、作業は少し大変になります。例えば、近隣の金融機関からの郵便物を探し、該当する金融機関に口座の有無を問い合わせます。かりに郵便物などがない場合は、少なくとも徒歩圏内の金融機関に事情を話し、念のため照会する必要があります。預金実績が確認できれば、相続財産になります。 ただ来年春ころから、マイナンバーを活用した「預貯金口座管理制度」がスタートすれば、故人のマイナンバーを利用して預貯金の実態を把握可能になり、相続手続きの効率化に役立ちます。 株式や投資信託などの有価証券、あるいは生命保険などについては、証券会社から送られてくる取引報告書や配当金の支払通知、保険会社から送られてきた保険証券の存在をまず確認することです。とくに最近では、高齢者も証券取引でネット証券を利用している方が多くなっています。その場合は、紙媒体の書類が少なため、把握が困難になるかもしれません。 ただし、有価証券、生命保険とも、業界団体が中心となり、加入者データの管理が進み、加入者の記録などの照会に対する対応策が進みつつあります。今後こうしたデータの提供が進めば、相続手続きが楽になることは間違いありません。