高体連チームとして初のプレミアリーグWEST制覇!「爆進」する県立校・大津は進化を続けてファイナル、選手権優勝へ
[11.24 プレミアリーグWEST第20節 大津高 2-1 静岡学園高 大津町運動公園球技場] 【写真】「えげつない爆美女」「初めて見た」「美人にも程がある」元日本代表GKの妻がピッチ登場 県立校の大津がプレミアリーグWEST初制覇! 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WESTは24日、第20節を行い、熊本県菊池郡大津町の大津町運動公園球技場で5連勝中の首位・大津高(熊本)と9位・静岡学園高(静岡)が対戦。大津が2-1で勝ち、初優勝を決めた。大津は12月15日に“高校年代真の日本一”をかけて、プレミアリーグEAST優勝チームとファイナル(埼玉)を戦う。 今季リーグ最多というホーム観衆3,072人の前で、大津が高体連チーム初となるプレミアリーグWEST優勝が決めた。阿蘇山の麓、人口36000人ほどの大津町に位置する県立校が、プレミアリーグでJクラブユースや私学の強豪校に挑戦。当初は力の差があり、過去2度の降格も味わっている。だが、2019年以降は残留を続け、今季は4月から9月にかけて10連勝を記録するなど首位を快走。これまで高体連チームのリーグ優勝は、EASTの青森山田高(青森)と流通経済大柏高(千葉)だけ(両校はファイナルも優勝)というビッグタイトルを獲得した。 30年以上に渡って大津を指導する平岡和徳テクニカルアドバイザーは、「この学年は色々な苦しい経験を積み上げながらこういう結果に繋げたっていうのは大したもんだと思いますし、進化するブルー軍団の真骨頂が出ましたね」と頷き、山城朋大監督は「昨日、『(プリンスリーグにも強豪チームがいる中で、)なぜオマエらプレミアリーグで優勝争いできてるのかっていうと、去年プレミアリーグで残せてるっていうのがやっぱりあるし、先輩たちがずっとプレミアリーグ戦ってきているからこうやって今優勝争いできてるんだよ』って話をしたので。(5バックで何とか守っていた時代から)勝ち点をこう積み重ねることが毎年できるようになってきて、その成果だと思うので、本当に先輩たちの積み上げのお陰かなと思います」と卒業生たちに感謝した。 大津は第19節終了時点で2位・神戸U-18と勝ち点7差。勝てば、自力での優勝が決まる状況だった。この日の先発は村上葵(2年)、DF大神優斗(3年)、野口悠真(3年)、村上慶(2年、U-17日本代表)、五嶋夏生主将(3年、U-17日本高校選抜候補)、MF兼松将(3年)、畑拓海(3年)、嶋本悠大(3年、清水内定、U-18日本代表)、舛井悠悟(3年)、小松皐(3年)、得点ランキング首位のFW山下景司(3年)が務めた。 一方、静岡学園は16日の選手権静岡県予選決勝から先発総入れ替えして臨んだ20日の東福岡高(福岡)戦で0-0ドロー。リーグ残留を決めると、その試合からまた先発10人を変えて前期1-8で敗れている大津戦に臨んだ。先発はGK有竹拓海(2年、DF関戸海凪(3年)、望月就王(3年)、土田拓(3年)、吉田俐軌(2年)、MF天野太陽(3年、ゲーム主将)、篠塚怜音(2年)、原星也(3年)、神吉俊之介(2年)、FW乾皓洋(3年)、佐々木雄基(2年)が先発した。怪我や大学受験のため、注目DF野田裕人主将(3年)ら主力4人を欠いていたが、前期との差を詰めて見せる。 前期の大津戦はミスでボールを失うなど開始23分間で4失点。だが、この日は継続して取り組んできた守備で耐えることや、ボールを動かすこと、そして、特長の個人技も表現していた。 試合は立ち上がりから攻守の切り替えが早い展開になった。大津の山城監督は「(静岡学園は前回の対戦時に比べて)攻撃も守備もアクションがかなり多くなっていたので、僕らが受け身にならないように。切り替えのところの勝負だったりっていうところで、今日は五分五分ぐらいには持っていけたかなとは思うんですけど」と振り返る。 大津は毎試合のように厳しいチェックを受ける嶋本が上手く味方を活用。兼松が上手くボールを引き出し、畑の長短のパスなどから舛井、野口の右サイドを中心にサイド攻撃を繰り出した。前半7分には右CKから兼松がヘディングシュート。また、変化をつけたセットプレーや畑の右足ミドルも交えて先制点を目指す。 一方の静岡学園は神吉のサイドチェンジ、天野の1タッチパスから、この日存在感を放った左の原が鋭いドリブルで仕掛ける。また、佐々木、神吉の両2年生レフティがキープ力を発揮したほか、サイドの狭い局面で鮮やかなパス交換も。加えて、GK有竹の好セーブや天野の要所での奪い返し、そして、対人守備で健闘した2年生CB吉田、関戸、望月、土田が相手の攻撃に良く食い下がるなど0-0で試合を進めた。 だが、静岡学園とはまた異なる上手さを持つ大津は、正確にボールを繋いで前進。そして、前半27分に先制点を奪う。右の舛井がゴール方向へのドリブルでDF2人の間を強引に突破。そのままニアへ右足シュートを叩き込んだ。インターハイ初戦敗退を機に逆足の左足でのクロスやシュート、内側に入って縦に行くドリブルなどバリエーション増加に取り組んでいたというサイドアタッカーが貴重なゴールを叩き出した。 だが、静岡学園は直後の30分、佐々木が個人技で右CKを獲得。これを望月が右足で蹴り込むと、ニアの天野が頭で合わせて同点に追いついた。静岡学園は直後に大津FW山下に抜け出されるも、GK有竹がシュートストップ。逆に相手セットプレーを跳ね返し、快足MF原が敵陣のボールに到達してGKと交錯するシーンもあった。奪い合いで負けずにテクニックとアイディアも発揮。大津も対人守備の強い大神や試合を通して的確なカバーリングを続けていた村上慶、五嶋が相手に攻め切ることを許さず、小松の左足シュートなどで勝ち越し点を目指した。 静岡学園は前半終了間際に負傷した天野に代え、後半開始からMF山縣優翔(2年、U-16日本代表)を投入。大津も小松を切り札のMF溝口晃史(3年)と入れ替えた。後半立ち上がりは静岡学園ペース。6分、右の山縣が絶妙なループパスをゴール前へ通し、巧みに抜け出した乾が右足を振り抜く。だが、ボールはニアポストをヒット。ボールをテンポ良く動かしながら押し込む静岡学園は、13分にも右CKのこぼれから乾が決定的なシュートを放った。 静岡学園はその後も、篠塚が攻守でバランスを取りながら攻撃に持ち込むが、単独突破が増えてしまう。また、動きの量も低下。逆に大津は後半半ばからギアがまた一段階上がったように映った。「僕らはそれ(攻守の切り替えの速さ)を90分やり通せるっていうところが結構強みであるので、結構前半そういったタフな戦いになっても、後半は少し優勢に進められたりっていう部分は、結構自分たちの中でも想定しています」と山城監督。前線から相手を“狩り場”へ追い込んでミスを誘うと、嶋本や畑のボール奪取から攻撃に結びつけた。 そして、野口の右足シュートなどでプレッシャーをかける。迎えた17分、嶋本が中央から運んで左でフリーの溝口へさばく。溝口の右足シュートはDFに当たってコースが変わり、左隅の方向へ。これはGK有竹がかき出したものの、溝口が回収から右足シュートをゴール右上へ叩き込んだ。 優勝へ近づくゴールに大津の選手たちは喜びを爆発させる。静岡学園は反撃するが、シュートまで持ち込むことができず、GK村上葵の守る相手ゴールを脅かすことができない。大津はクリアのような縦パスを山下が収めてしまうことも強み。また、後半は嶋本や畑、兼松が中盤で相手との差を生み出していた。その大津は31分に兼松をMF野中勇夢(3年)へ交代。静岡学園も35分に神吉をFW加藤佑基(3年)と入れ替える。 大津は36分、相手ビルドアップを封鎖して山下が決定的な右足シュート。静岡学園も加藤がドリブルで2人3人とかわして大きく前進するが、PAへ侵入する前に村上慶に阻まれた。40分、静岡学園は乾とFW大木悠羽(3年)を交代。大津も舛井とMF曽山瑚白(3年)を交代する。 静岡学園の川口修監督は、「大津は前半の突破してバチっと決める力。あれがやっぱり他のチームと違うところだし、今年はほんとにJユースも含めて、もうトップのチーム。優勝に相応しい良いチーム。でも、(今日は)ウチにとっても収穫大のゲームになった。発見もあった。選手権までにひっくり返せるチームになる手応えは掴んだゲーム」。静岡学園が成長を示したが、今回も大津が上回った。体力的に苦しい時間帯でも各選手がファーストDFの寄せやプレスバックを徹底。追加点のチャンスも作りながら最後まで走り切って勝利し、優勝を喜んだ。 今年、平岡テクニカルアドバイザーが大津の選手たちに送った言葉は「爆進」だ。「色々な風が吹いてるので、そこに負けないように前に進もうという。凧(たこ)が1番高く上がるのは風に向かってる時であると、風に流されてる時じゃないと。これ、ウチの父が僕が(高校進学時に)帝京行く時に言ったことであるんですけど、それを今回、ずっと使ってるんです。背中を押すための言葉は何かなっていう中で、今回は『爆進』という、ほんとにそれに相応しい言葉を。『ダッシュフォワード』という英語の言葉もつけたんですけれど、(この優勝は風に向かって挑んだ)素晴らしい選手たちの成果だと思います」と微笑んだ。 今年のチームは五嶋や嶋本、兼松、大神、そして怪我から復帰してきているGK坊野雄大(3年)と昨年からの主軸が多数。また、五嶋は仲の良さやサッカーが大好きなところを今年のチームの特長に挙げる。「今年の自分たちはとにかく仲が良いです。(向上心も強く、インターハイ初戦で)負けてから本当により一層成長できたと思うんで。そういうところでサッカーが大好きっていうのは、ほんとに今年のチームだなと思います」。この日、スタンドで刺激を受けた選手たちとまた、競争。一日一日を大切にする“進化するブルー軍団”は、これからさらに成長と白星を積み重ねる意気込みだ。 この日、チームは勝ち点を52とし、2023年の青森山田が記録した12チーム制の勝ち点記録51を更新した。山城監督は「負けなしで選手権に行くっていうことも1つモチベーションにできるかなと。どうにか成長して選手権へ行けるように」と語り、五嶋は「これで満足してるメンバーは1人もいないと思いますし、ファイナル勝つということにモチベーションにしている選手ばかりだと思うんで、3週間後、(ファイナルに)より成長した姿で臨めると思うんで、もっともっと成長できると思って練習を頑張りたい」。プレミアリーグWESTの残り2試合、プレミアリーグファイナル、そして選手権も勝ち続けて、大津が3年間で全てライバルたちよりも進化したことを示す。