AI検索はGoogle検索の10倍以上の電力消費! エネルギーや公益セクターが大きく上昇。中国とアメリカとの関係悪化には懸念も
●AIの電力消費でエネルギーセクターや公益セクターが上昇。AIの2次的、3次的影響を受ける銘柄が話題に 2024年5月21日(火)、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう! 」で情報配信をしている元フィデリティ投信トップアナリストのポール・サイさんが、ストックボイス社が手掛ける経済・マーケット番組した。 【詳細画像または表】 前回の放送では、ポールさんが参加した世界最大の投資持株会社であるバークシャー・ハサウェイの株主総会の様子や、筆頭株主のウォーレン・バフェットのQ&Aを紹介。政府・日銀が円安は行き過ぎだと言っている一方、と断言できる理由を教えてくれた。 今回の放送では、アメリカ株が絶好調である要因の1つであるAIの、2次的、3次的な影響が話題に。だそうで、マーケットではエネルギーや公益セクターの物色意欲が強まっているそう。クリーンエネルギーのなかで、原発は安定した電力提供が可能で、事故の可能性はありつつも、再び注目され始めているとのことなので、さっそくチェックしていこう。 ●アメリカ株が絶好調なのは、業績がよく、経済状況もいいから 番組冒頭、アシスタントの木村カレンさんが、NYダウやS&P500指数、ナスダック総合指数が過去最高値を更新して、アメリカ株が絶好調であることの背景をどう見ているのか、ポールさんに聞いた。 アメリカ株が絶好調な理由について、ポールさんが挙げたのは以下の5つだ。 ●アメリカ経済自体が割と強いこと ●インフレが少し緩和して、いい方向に向かったこと ●8割の会社の決算がコンセンサスより8%上だったこと ●成長率が前年比7%上昇して、コンセンサスの5%を上回ったこと ●AIの分野でアメリカが世界をリードしていること つまり、といううシンプルな理由でアメリカ株は上昇しているようだ。 すると、番組MCの渡部一実さんが、決算やAIの話に関連して、決算発表が5月22日(水)に予定されているNVIDIA(※)は、ポールさんからみて成長がまだ続きそうなのか質問した。 (※NVIDIAの決算では、AI需要による過去最高の売上高と、市場予想を上回る強気な売上高見通しが示された) NVIDIAはAI革命をリードしていて、だとポールさん。マイクロソフトが5月20日に新しいAI機能を内蔵したノートパソコンを発表したほか、いろんな会社がAIへの投資を増やしており、それがNVIDIAの業績に寄与しそうとの見方だった。 そんなNVIDIAを、ポールさんは2022年9月に100ドルくらいで買ったというエピソードがあり、渡部さんはそれを思い出して「素晴らしいリターンをお持ちのようです、すみません」とうらやましがる素振りを見せた。 ●AIで検索する際の電力消費量はGoogle検索の10倍! 次は、AIの電力消費の話題に。 マーケットでは最近、AIの電力消費に注目が集まっているようで、おおざっぱにいうと、くらいかかるのだそう。 AIの電力消費は、主にデータセンターを冷却するために使われており、チップなどの効率化とともに電力消費量も改善するだろうけれど、今は従来の検索の10倍の電力消費量ということで、電力消費がかなり増えると市場が見始めているようだ。 実際に、ユーティリティ(公益)セクターのリターンを、ティッカーコードXLU(SPIDERのユーティリティETF)で見てみると、昨年(2023年)の秋にボトムをつけて、今年(2024年)の春以降、急上昇していると渡部さんは指摘した。 ポールさんによると、ユーティリティ会社の本質は何も変わっていないけれど、AIの電力消費への期待でユーティリティセクターが上がっているのだという。 AIの電力消費の話は半年前、テクノロジー関係やオタク系のメディアから出始め、今はウォールストリートジャーナルなど一般的な新聞メディアも取り上げているそう。 AIの恩恵をNVIDIA、マイクロソフト、メタなどが受けるのはみんなわかっているため、マーケットは今、いて、AIの電力消費にも注目が集まっているとのことだった。 ●クリーンエネルギーのなかで、原発は安定した電力供給が可能であり、事故の可能性はありつつ、再び注目されている 続いて、エネルギーの安定供給の話題に。 AIや暗号資産は電力消費が大きい一方、クリーンエネルギー、温暖化の問題もあって、エネルギーは人類が先に進むための重要な課題の1つになっているとポールさん。 これを受けた渡部さんが、クリーンエネルギーのなかで太陽光や風力などは発電量が安定しない一方、原発という考え方もあるとコメント。原発をイデオロギー(政治・社会思想)ではなく、投資対象としてどう見ているのか、ポールさんに聞いた。 万全のエネルギーというものは存在せず、課題はあるとポールさん。風力や太陽光は不安定で、バッテリーのテクノロジーも電力を安定供給できるほど発展していない一方、火力発電はCO2を排出するし、天然ガスは少しマシだけど完全ではないとのこと。 ようだ。特に、中小型の原発に可能性がありそうで、アメリカの空母や潜水艦には小型の原発が乗っているけれど、あまり事故になっていないし、原発自体も福島の事故以来進化しているため、これからのエネルギー問題で重要な役割を果たしそうとポールさんは見ている。 また、ウラン関連の上場銘柄は少ないけれど、アメリカ上場のウランETFにURAという銘柄があるほか、ウランを扱っている会社としてCAMECO(CCJ)やNexgen Energy(NXE)、イギリス上場のYELLOW CAKE(YCA)などがあるとのこと。ポールさん曰く、オススメできるのは時価総額や流動性が高くてグローバルに展開しているCAMECOだけだとのことだった。 ●一番心配なのは中国とアメリカの関係。悪化すれば、すべてがひっくり返ることに 最後は、アメリカの状況をひっくり返す可能性がある地政学リスクの話題に。 イランの大統領が事故死したり、ロシアがウクライナへの攻撃を強めたり、イスラエルの問題もあるけれど、ポールさんが一番心配しているのは、なのだという。 中国とアメリカの関係が悪化するというのは、メインシナリオではなく、短期のシナリオでもないけれど、不動産バブルがはじけている中国は、経済と政治のつながりで何か発生するリスクが大きいそう。 もし、台湾と中国、アメリカが戦争になると、日本にとっては身近な話になるし、通貨をはじめ全体的に大きなインパクトを与えるため、可能性の話としてポールさんは少し心配している。 また、アメリカにも問題があるようで、アメリカはAIでリードしているけれど、軍事産業とテクノロジー産業が最近、密接ではなくなってしまって、航空関係の生産力や開発力が少し弱くなってきているとのこと。 エネルギーの面でも、石油の埋蔵量はアメリカが膨大である一方、中国は少ないほか、電池の材料であるリチウムの埋蔵量はアメリカが少なく、中国は多いなどの問題があるそう。 ウランの埋蔵量世界7位のニジェールでは、クーデターが起きて、テロ掃討に協力していたフランス軍が撤退したりと、地政学リスクが高い地域で、少し先の未来では、資源の奪い合いになる可能性も否定できないとのことだった。 ここまで、5月21日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に電話出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。 「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう! 」
ポール・サイ
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