貝塚観察館(福島県南相馬市)正賞 県建築文化賞 遺跡傷めぬよう建設 11点入賞、2月5日表彰式
環境に調和し、景観上優れた建築物をたたえる第40回福島県建築文化賞の正賞に南相馬市の「浦尻貝塚 縄文の丘公園 貝塚観察館」が輝いた。園内の斜面に眠る遺跡を傷めないように建築され、住民がサポーターとして維持・管理に関わり地域再生の一環として重要な役割を果たしている点が高く評価された。準賞1点、優秀賞3点、特別部門賞3点、復興賞3点の入賞計11点が決まった。福島民報社、県、県建設業協会、県建築士会の主催。表彰式は来年2月5日午前11時から、福島市の杉妻会館で行われる。 正賞となった貝塚観察館は、国指定史跡「浦尻貝塚」縄文の丘公園に建てられた貝塚遺跡の展示施設。海を見下ろせる広大な丘の中心にあり、小さな建築物が時空を超える入り口のような役割を果たし、未来までつながる思いをはせられる空間となっている。傾斜面に突き出た展示室となる「箱」の高さを抑え、基礎形状も斜面に眠る遺跡を傷めないよう、地域住民との対話を重ねて慎重に決められた。
東日本大震災では縄文時代の海岸線まで津波が到達した。この土地を離れて暮らす人も多い中、住民がサポーターとして維持・管理に関わるなど、地域再生に重要な役割を果たしている点も高く評価された。 建築主は南相馬市。アキアーキデザイン一級建築士事務所(東京都)が設計を手がけた。中里工務店(南相馬市)とスタジオ三十三(京都府)が施工した。鉄筋コンクリート造りで、床面積は34平方メートル。住所は南相馬市小高区浦尻字台ノ前1の3。 県建築文化賞は震災と東京電力福島第1原発事故のため、2年間中断し、2013(平成25)年に再開した。今回は2017年4月1日から2023(令和5)年3月31日までの6年間に完成し、受け付け時点で満1年以上使われている建築物を対象とした。公共建築物20点、民間建築物16点の計36点の応募があった。 ■南相馬の歴史を体感できる場に 南相馬市長・門馬和夫氏 東日本大震災の津波による被災地を一望できる丘の上に整備した。縄文時代から現代に至る南相馬市の歴史を五感で体感できる場所として活用され続けることを期待したい。