APECが閉幕…中国と中南米の急接近で世界はどう変わるのか?(中西文行)
【経済ニュースの核心】 南米ペルーで開かれていたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)。16日の「マチュピチュ首脳宣言」では、貿易や投資、環境問題などの分野で「大きな変化が起きている」と指摘し、自国優先を掲げるトランプ米次期大統領を牽制した。また「効果的な多国間協力が一層重要となる」と、中国が主導したような表現を明記し、閉幕した。 【写真】物議醸す石破首相の「座ったまま握手」は外務省の大失態! ■石破総理は集合写真撮影に間に合わず 1990年に日系人として初めてペルーの大統領に就任したフジモリ元大統領が9月11日に他界。石破茂総理大臣は、フジモリ氏の墓参に出かけ、APEC閉幕に合わせた集合写真の撮影に間に合わないという珍事を起こした。 APECに先立ち、中国の習近平国家主席は14日、ペルー・リマの大統領府でボルアルテ大統領と共にチャンカイ港の開港式典にオンラインで出席。 中国遠洋海運集団が60%出資する同港は、中国の華為技術(ファーウェイ)と、メキシコ系通信会社クラロが5G回線基地局を設置している。経済財務省によると、チャンカイ港第1フェーズの段階でパナマのコロン港、ブラジルのサントス港を上回るコンテナ規模になる見込みという。中国は初めて巨大な中南米市場に直接アクセスできる港湾を確保した。
ペルーの「チャンカイ港」がハブに
チャンカイ港はペルーだけでなく中国との貿易関係を強める周辺国の利用も想定され、「南米のハブ港」の機能が期待されている。水深は17.8メートルと世界最大級のコンテナ船も寄港が可能。ペルー太平洋岸とアジアを結ぶ海上輸送は平均25日となり、従前に比べ約10日間短縮される。ペルーや隣国チリは銅の主要産出国。周辺ではリチウムも埋蔵量が豊富で、中国は電気自動車(EV)に欠かせないこうした戦略物資の円滑な輸入を図る。中国の主要貿易相手国上位10カ国に中南米諸国はないが、今後はペルーがランクインするだろう。 中国は、対米貿易戦争に備え中南米を重視。APEC前にアルゼンチン、ペルー、ボリビアの外相が相次ぎ訪中し、王毅外相と会談した。特筆すべきはアルゼンチンで、同国のモンディノ外相は4月30日に北京で王氏と会談。アルゼンチンで2023年12月に右派ミレイ政権が発足後、初めての外相訪中だった。ミレイ大統領が23年の大統領選で「共産主義者とは手を組まない」と述べ、中国と距離を置く考えを打ち出し、就任後に前政権が決めたBRICS加盟を撤回していたからだ。 アルゼンチンの23年の輸入額は2割が中国からでブラジルに次ぐ規模。輸出先でも中国が3位。モンディノ外相は会談で「中国との友好を追求する政策は変わらない」と語った。同氏は、ファーウェイや中国機械設備工程のトップらと会い、アルゼンチンへの投資を促した。 中国と南米の連携強化は世界にどう影響するか。注意深く見つめていきたい。 (中西文行/「ロータス投資研究所」代表)