酷暑、農家はどう対応 自分と作物守る あえて雑草、遮光ネットも
全国の産地では、熱中症と農作物の高温障害を防ぐ両にらみの対策が続く。日本最大のブドウ産地・山梨県甲府盆地の果樹園では、実の着色に影響する熱帯夜を和らげようと雑草を伸ばしたり、夜明け前に薬剤散布をしたりと工夫する。観測史上最高気温を記録した静岡県浜松市では、菊農家がハウス内に遮光ネットを巡らせたり、循環扇を24時間稼働させたりしながら、8月盆前の出荷に間に合わせようと知恵を絞る。 【画像】ハウス内に遮光ネットを巡らす
ブドウ、雑草で気温低く 甲府市
「真っ黒に色づく時期なのに、まだ黄緑の粒がある」。甲府市にある2ヘクタールの果樹園で30種のブドウを栽培する山坂勇樹さん(38)が、大粒で黒紫色の皮が特徴の「ピオーネ」を1房ずつ確認していた。7月31日午前10時、園内は早くも30度を超えていた。ブドウを直射日光から守る果実袋を丁寧にかけ直す。 警察官から転身し就農9年目。近年の暑さは異常だと感じている。ファン付き上衣を常用し、日の出前に薬剤散布などの体力仕事を始め、90分ごとに30分休憩する。園内の気温を下げるため、ホワイトクローバーやライ麦などの雑草を伸ばす「草生栽培」も試みる。 盆地にある甲府は本来、昼間は暖気が、夜間は冷気が斜面と平地の間を循環するため寒暖差が大きく、果実の栽培に適した気候だ。JA山梨みらいによると、今年は日焼け果や着色不良への恐れがあるという。7月下旬は40度近い猛暑が続いた一方、8月が収穫最盛期の「ピオーネ」など黒系品種の着色条件「夜温24度以下」になかなかならないためだ。 「着色が不十分だと、食味は一緒でも収入が2、3割落ちてしまう。今年は挑戦の年だ」。山坂さんが言った。
菊、白ネットで遮光 静岡県浜松市
7月下旬に40度台を記録するなど猛暑日が連日続く浜松市は、菊など盆花の出荷期を迎えている。JAとぴあ浜松の担当者によると、菊は8月盆の時期に開花するよう育てる。しかし、今年は暑さでその調整が難しく、開花が遅れる恐れがあるという。「8月上旬の出荷に間に合えばいいが」と気をもむ毎日だ。 ハウス12棟で花弁が黄色い菊「精の光彩」などを栽培する宮本静真さん(42)は、ハウス内を白色の遮光ネットで覆い、15メートル置きに設置した循環扇をフル稼働させている。屋根にも白色の遮光塗布剤を塗っており、数日置きに塗り直す。 ハウス内は何もしなければ外気より4度ほど高くなる。1日、屋根の塗布剤をチェックしてハウス内に戻った宮本さんは温度計を見ながら「何とか36度に抑えられている」と安堵(あんど)した。高さ90センチを超えた菊を見つめ、「一本でも多くお盆に間に合わせたい」と言った。
日本農業新聞