イギリスのマイナーメーカー「ヴォグゾール」の工場閉鎖で大騒ぎ! ムリなEV化の流れが生む社会不安
政府が雇用を減らして外国企業の進出を助長する危険性
イギリスでは100%BEV販売達成時期がやや流動的となっているが、これはBEV自体の技術的問題(価格設定も含めて)というよりは、雇用問題を考慮したものなのかなと報道に接して感じた。この報道でもBEVに政府が積極的な姿勢を示すのも、BEVという新たな分野にイギリス経済の活路を見出しているとしながら、一方でBEVへの生産体制の整っていないイギリスのいまの自動車産業ではいたずらに雇用不安を招くだけではないかと結んでいた。 「2035年・100%」だけがひとり歩きすれば、腰の軽い中国メーカーの現地工場進出などを招く可能性もある。「それなら雇用不安はなくなるのでは?」とも思えるのだが、ICE車に比べればはるかに部品点数の少ないBEVを最新設備の工場で生産するとなれば、抱える従業員数もいまよりは限られるし、スムースにBEV生産へ移行できるのかという問題もある。 つまり、いたずらに中国メーカー製BEVに市場を席巻されるだけで終わってしまう可能性もあるのだ。 日本も対岸の火事ではない。とにかく政治的な問題はあるものの、中国はまさにお隣さん、イギリスと中国ほどの距離はない。イギリスに比べれば日本メーカーはまだまだオリジナル性を保っているのでそこまで心配する必要はないとも思えるが、2024年11月、政府有識者委員会は国連へ提出する新たな温室効果ガス削減目標として、2035年度に2013年比で60%削減を提案している。 すでに2030年度に2013年比で46%削減するとしており、優秀なHEVをラインアップし、ICE車でも十分環境負荷の低いモデルを多くラインアップする日本車であっても、今後は自動車が日本国内でも温室効果ガス削減のやり玉に挙がるリスクは高まっている。
小林敦志