実話が超怖い…実在の事件をモデルにしたと噂の日本のドラマ(5)日本の暗黒期を予兆…世間を揺るがした事件は?
毎年90本前後制作されている日本のドラマ。これまで制作されたものの中には、目を覆いたくなるような事件や凶悪犯罪をモデルとしたものも少なくない。というわけで、今回は、実際に起きた事件をモデルにしている日本のドラマを5本紹介。ストーリーと共に実話の内容も解説する。第5回。(文・編集部)
『虎に翼』(2024)→帝人事件
放送期間:2024年4月1日~9月27日 脚本:吉田恵里香 キャスト:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、三山凌輝、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、平田満、岡田将生、沢村一樹、滝藤賢一、松山ケンイチ、小林薫 【作品内容】 1931年。女学生の猪爪寅子は、下宿人の佐田優三の夜学に弁当を届けにいった折、教鞭をとる穂高重親に出会う。穂高は寅子に明律大学女子法科への進学を勧めるが、後に「時期尚早だった」と訂正する。寅子の母であるはるはこの言葉に激怒し、その足で書店に。寅子に六法全書を買い与え、寅子を明律大学に入学させる。 【注目ポイント】 日本初の女性弁護士、三淵嘉子に材を取った朝の連続テレビ小説『虎に翼』。毎朝、伊藤沙莉演じる主人公寅子の勇姿に胸を躍らせた方も多いのではないだろうか。 太平洋戦争直前の日本を舞台とした本作には、当時の世相を反映したモチーフが数多く登場する。中でも注目なのは、第5週「朝雨は女の腕まくり?」で登場した「共亜事件」だろう。 「共亜事件」とは、共亜貿易の株価高騰を知った政治家たちが、不正に得た利益をばらまいたという一大汚職事件のこと。作中では、帝都銀行経理第一課長を務めていた寅子の父親、直言が贈収賄の疑いで逮捕され、寅子が父親を救うべく奔走する姿が描かれている。 さて、この「共亜事件」にも、モデルとなる事件が存在する。それが、1934年に発生した「帝人事件」だ。 これは、台湾銀行が保有する帝国人造絹糸(現:帝人株式会社)の株式が不正取引され、その売却益が政財界にばら撒かれたという事件で、両団体の経営者が逮捕されたほか、最終的に商工大臣や鉄道大臣の逮捕や斎藤実内閣の総辞職に至る一大スキャンダルに発展した。ただ、のちに本事件は倒閣を目的としたでっち上げだったことが判明。ドラマ同様、起訴された人物は全員無罪になっている。 なお、ドラマ内で読み上げられた「あたかも水中に月影を掬いあげようとするかのごとし」という判決文は、帝人事件で裁判官を務めていた石田和外が起草したもの。斎藤実をはじめとする当時の政治家にとっても、そして、直言や寅子たちにとっても、雲をもつかむような事件だったに違いない。 さて、帝人事件で総辞職した斎藤実は、ほどなくして陸軍の皇道派によって殺害される。世にいう二・二六事件だ。そして、本事件以降、政治の実権を陸軍の統制派が握るようになり、軍靴の音が高鳴っていく。 そう考えると、帝人事件は、太平洋戦争のひとつのきっかけとなった事件だったのかもしれない。 (文・編集部)
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