仕事の人間関係、プロジェクトで「うまくいかない時」に他部署と取引先を味方につける、トヨタ式「スゴい方法」
仕事をしていると、一見、無理難題と思える事案をクリアしなくてはならないことや、これまで経験のないプロジェクトを任されて、従来の仕事のやり方だけでは、目的を達成できない事態に直面することもあるでしょう。 【マンガ】5200万円を相続した家族が青ざめた…税務署からの突然の“お知らせ” そんなときは、発想を大きく転換させ、抜本的にやり方をカイゼンしていく必要があります。 前回の記事<膨大なタスクのせいで「優先順位」が見えなくなるとき、その混乱から逃れる「唯一の方法」…トヨタ式の『ハイブリッド仕事術』に学ぶ>では、問題をあぶりだし、プロジェクトマッピングとして整理する方法をお伝えしました。 今回も難題をクリアし、ブレイクスルーを起こすための、戦略的な視点の持ち方、新しい発想を生み出すポイントについて、森琢也著『トヨタで学んだハイブリッド仕事術』(青春出版社)より一部抜粋・編集してお伝えします。
他部署や取引先を味方につける「目線」と「口ぐせ」
他部署や他社の人と一緒にチームを組んで大きなプロジェクトなどを進めるときに、なぜか目線が揃わず、うまく連携して仕事を進めることができないことはないでしょうか? ありがちなのは、各人が「自分の立場」や「自分の役割」からしかプロジェクトを見ようとしていないことです。各人が自分の目の前のことをうまくこなすことだけに終始していては、プロジェクト全体を着実に前に進めていくことが難しくなってしまいます。 そこで、あなたが他部署や他社のメンバーとの共同チームのプロジェクトリーダーを任されたという場面を想定してみましょう。各人の目線がバラバラで、ミーティングを開いても個別最適の意見ばかり。 全体最適を考えた意見はほとんど出てこず、話がまとまらない。そんな状況を打破するために、トヨタでは「2つ上の目線を持て」と言われます。 ■「2つ上の目線」を持つ 具体的には、あなたが一般社員なら課長の目線、課長なら部長や社長の目線でプロジェクトの全体を常に考えていきます。 自分自身を自部署や他部署を束ねる立場(=組織長)に置いて、プロジェクト全体を考えることで、メンバー全員と共通の目標、目的意識、問題意識を明確にし、共有を図ることができます。「2つ上の目線」での発想や言動を増やしていくことで、共感や求心力を高めることができれば、リーダーとしてプロジェクトを成功に導く可能性が高まるはずです。 それでは、「2つ上の目線」を持つために、おススメの方法を2つ紹介します。 ■「モデリング」を行う ここでのモデリングとは「真似る」ということ。具体的には、自分よりも「役職が2つ 以上、上の人」の行動や考え、仕草を真似する(モデリング)ことです。 例えば、会議でいつも部長が座る定位置に自分が座ってみるといった単純な行動をするだけでも人間の脳は錯覚を起こし、これまでとは異なった発想や発言が促されることが心理学的にも実証されています。 時には、ぜひ上役の席に座ってみて、そこから周りがどう見えるのかを体験しつつ、そこに座る人が抱えているやりがいや責任感にも思いを馳せてみましょう。 ■「私たち」を口ぐせにする 「私(一人称)」ではなく、他部署や他社を含むチームのメンバーを示す「私たち(チームリーダーの目線)」などの一人称複数で話すことで、自然と「2つ上の目線」で発想し、メンバーとの共通項(目的意識や問題意識)をもとに話を展開できるようになります。 「私たち」を口ぐせにすることで、一貫性の原理が働き、自然に「2つ上の目線」で考える習慣が身につくようになります。 加えて口ぐせは伝染しやすいものです。周囲も「私たち」を主語で使い始めると、同じく一貫性の原理が働き、チームのみんなも「2つ上の目線」で議論するようになります。 「2つ上の目線」は、モデリング(真似する行動を取る)や「私たち」を口ぐせにすることで、より確かなものになります。ぜひ、実践してみてください。 …つづく後編記事の<仕事での「思わぬトラブル」はこうして乗り越える…トヨタ式《最悪の場面》で忘れてはいけない「2つのステップ」>では、とっさの事態に応じる「逆転シナリオ」の具体的な描き方をお伝えします。
森 琢也(中小企業診断士)