EU、自動車産業の支援へ2025年1月に会議体発足 中国勢の台頭などで先行き厳しく
欧州連合(EU)の欧州委員会は、経営不振に陥った欧州の自動車メーカーや部品メーカーの支援策を検討する会議体を来年1月に発足すると発表した。自動車メーカーや労働組合、業界団体などが参画し、脱炭素化の支援や雇用の確保、データ活用などの戦略を議論する。欧州の自動車関連企業では、電気自動車(EV)戦略の失敗などを理由に大規模なリストラが相次いでいる。欧州委としては産業政策を立て直し、自動車産業の競争力回復を急ぐ考えだが、エネルギー高や中国勢の台頭など構造問題もからみ、先行きは厳しそうだ。 「ストラテジックダイアログ(戦略的対話)」と呼ぶ意見交換会の場を設置する。フォンデアライエン欧州委員長は「自動車産業は欧州の誇りだ。大きく破壊的な移行期においてこの産業を支援する必要がある」と語った。 同会議体にはインフラ関連企業やバリューチェーン関係企業なども幅広く参画し、包括的に産業政策を議論する。規制の枠組みも重点検討事項に位置付けており、2025年1月から段階的に強化される二酸化炭素(CO2)排出規制の見直しが議論される可能性もありそうだ。 新たな会議体を立ち上げる背景には、EV戦略の失敗や中国勢などとの競争激化を背景とした域内企業の業績悪化がある。フォルクスワーゲン(VW)は独国内の車両生産停止や雇用削減で労働組合と合意した。ボッシュやシェフラーなど大手部品メーカーもリストラを迫られている。 欧州の自動車政策はここ10年間ほど迷走している。15年に発覚したディーゼル不正で軌道修正を迫られた欧州は、再生可能エネルギー比率の高さも生かせるEV政策へと一気呵成にシフト。これに呼応し、域内の自動車メーカーもEVを相次いで投入したが、車載電池のコストが思うように下がらずに苦戦。同じように国策としてEVの開発や普及に取り組む中国との競争にも巻き込まれ、域内の自動車メーカーや部品メーカーは苦境に立たされている。 域内の自動車産業の回復に向け、欧州委がどのような支援策を打ち出すか注目される。ただ、ウクライナ紛争や脱炭素化に偏重した環境政策などに端を発したエネルギー高、中国市場での新車シェア低下、米国の自国第一主義など構造問題も多く、欧州委の支援策が域内自動車産業のV字回復につながるかどうかは見通せない。