「生成AIのスキルとリテラシーを可視化し、安全な社会実装を目指す」――、生成AI活用普及協会の取り組み
一般社団法人 生成AI活用普及協会(以下、GUGA)と株式会社ネットラーニングは14日、生成AI時代における学びの変化と学習歴がもたらす人材の価値向上をテーマに説明会を開催した。 【画像】オープンバッジについて GUGAは、生成AIの社会実装を通じて産業を再構築することを目指しており、生成AIのリスクを予防する初心者向けの資格試験「生成AIパスポート」や、生成AIの活用方法を学ぶ企業向けの研修などを提供している。一方のネットラーニングは、企業や大学に向けた教育、研修、学習ソリューションをクラウドサービスとして提供する企業だ。 まず、ネットラーニング 代表取締役社長の岸田努氏が、企業のリスキリングやDX人材育成において活用が進みつつあるオープンバッジについて解説した。 オープンバッジとは、教育技術コミュニティの1EdTechが制定した国際標準規格のデジタル証明で、獲得したスキルや資格証明が画像ファイルに格納され、その情報をさまざまな形で公開できるというもの。ブロックチェーン技術を搭載することで改ざんを防止している。2022年には世界で7500万個のバッジが発行され、2024年の発行数は1億個を超えていると見込まれている。 ネットラーニングは、国内でオープンバッジを発行している企業の1社だ。岸田氏はオープンバッジの使用方法について、「メールの署名にバッジを添付して自身の持つスキルや資格を示すことができるほか、LinkedInでも資格欄に取り込むことが可能だ。バッジをクリックすると、バッジの発行者や資格の受領者、バッジが証明する内容、取得の条件などが確認できる」と、自らのバッジを披露した。 企業での事例としては、IBMが2016年にオープンバッジを導入、人材育成に活用した。その結果、社内研修の申込数、コース終了率、試験合格者数、合格率のすべてにおいて、オープンバッジの導入後に数値が向上したという。また、バッジ取得者へのアンケートでは、87%が学習意欲が高まったと回答し、学習時間も70%増加したと回答している。 オープンバッジが教育や研修に有効な理由について岸田氏は、「就職の際、これまでは卒業大学などの学位が重視されていたが、今ではスキルが重視されるようになっている。その背景には、雇用形態がメンバーシップ型からジョブ型へとシフトしていることもあるだろう。そうした中、能力やスキルをわかりやすく示す必要性が高まり、バッジが受領者のスキルや学習歴を可視化する手段となっている」と話す。 日本国内でも、花王や日本製鉄、旭化成、富士通、NECなど、さまざまな企業がオープンバッジを採用し、人材育成などに活用しているという。 また「海外では、オープンバッジを活用した転職マッチングサイトも存在する。日本にはそのような事例はないが、今後採用に活用することも考えられるのではないか」と岸田氏は述べている。 ■ スキルとリテラシーの可視化を目指して 続いて登壇したGUGA 事務局次長の小村亮氏は、生成AIに関する市場動向や人材育成について説明した。 まず小村氏は、ここ約1年半での生成AIに関する国のさまざまな動向を紹介。2023年5月には第1回AI戦略会議が開催され、そのわずか2週間後には「AIに関する暫定的な論点整理」が発表されたというスピード感からも、「国は本気で施策を推進している」(小村氏)とした。 その中でも特に重要なものとして小村氏は、今年4月19日に総務省・経済産業省が共同で発表した「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」を挙げる。このガイドラインは、AIの開発者や提供者のみならず、AIの利用者も対象としたものとなっており、「全ビジネスパーソンがAIと付き合っていくべき対象となっていることがわかる」と小村氏。 同資料の中では、生成AIリスキリングの必要性についても言及されている。小村氏は、「生成AIリスキリングでは、AIのスキルのみならず、AIリテラシーも高めることが重要だ」としている。 AIリテラシーがあることを可視化する資格試験が、GUGAの提供する生成AIパスポートというわけだが、スキルも含めて可視化するためのカードとして、GUGAは「生成AI人材認定カード」を10月24日より提供開始している。「生成AI人材認定カードをスマートフォンなどの端末にかざすと、生成AIリスキリングに取り組んだ学習歴が表示され、生成AI活用レベルが簡単に証明できる」と小村氏は説明する。 同カードは、オープンバッジやNFC(近距離無線通信)などの技術を採用している。小村氏は、「就職や転職、取引などにおいて、学んだ事実を示すために利用してもらいたい」と話す。現段階では、GUGAが発行する生成AIパスポートのオープンバッジが表示されるのみだが、今後表示されるバッジの種類を増やす考えで、「同カードの価値向上と日本社会への普及を推進し、生成AI人材の努力を市場価値の向上や賃金の上昇につなげることを目指す」(小村氏)としている。 カードの発行手数料は3300円で、月額利用料は550円(いずれも税込)。1年間以上継続してカードを利用した人は、生成AIパスポート資格更新テストの受験費用が免除される。 小村氏は、「生成AIのポテンシャルを引き出すのも、リスクを招くのも、最終的には判断する人間次第だ。だからこそ、テクノロジーと社会の変化に対応するために学び続けることが重要となる。生成AI人材認定カードを提供することで、信頼性の高い生成AI人材を輩出し、安心・安全な生成AIの社会実装を加速させていく」と述べた。
クラウド Watch,藤本 京子