【視点】候補者は国家像示せ
事実上、次期首相を決める自民党総裁選に過去最多の9人が立候補した。いわゆる「裏金」問題を抱える旧安倍派を除き、党内で、将来の首相候補と目されていた人物のほとんどが名乗りを上げた。11月にも予想される衆院選に向け「選挙の顔」選びの総力戦になっている。 総裁選の争点として選択制夫婦別姓の導入など、細かい政策論のような話も出ているが、私たちが候補者から聞きたいのは、リーダーとして世界の中でどのような日本を目指すかという「国家像」だ。 「裏金」問題に端を発する政治改革に取り組むことは、当然の前提だ。首相を目指す候補者である以上、政策論争は、あまり枝葉末節にこだわるべきではない。 多くの国民が関心を抱いているのは経済再生、少子高齢化対策、安全保障の分野だろう。さらには憲法改正への姿勢も視野に入ってくる。 届け出を終えた9人の演説会からは、各候補者の個性が感じ取れた。 高市早苗経済安全保障相は「どこに住んでも安全で必要な福祉や教育、医療を受けられ、働く場所がある強い日本列島をつくっていこう」と呼び掛けた。 小林鷹之前経済安保相は「世界をリードし、他国の動向に右往左往しない真に自立した日本、世界から信頼され、必要とされる日本を作る」と訴えた。 林芳正官房長官は、少子化対策、災害対応、外交防衛の「三つの安心」を打ち出し「経験と実績を愛する日本のために使い切りたい」とアピールした。 小泉進次郎元環境相は「日本の政治を変え、長年議論ばかり続け、答えを出していない課題に決着をつけたい」と衆院を早期に解散する意向を示した。 上川陽子外相は「新しい景色」をキャッチコピーに「今まで以上に経済を強靭化し、日本の可能性を世界に切り開いていく」と意気込んだ。 加藤勝信元官房長官は所得倍増を掲げ「人々の声を集め、良い意見を取り入れて政治に反映していく。これが私の政治信条の基本だ」と強調した。 河野太郎デジタル相は「世界の平和と安定、共通の価値観を守るため、日本はどういう責任を果たすのか」と問い掛け、日本の発信を求めた。 石破茂元幹事長は、今回を最後の総裁選挑戦と位置付け「国民から信頼される自民党、未来を切り開く自民党でありたい」と決意表明した。 茂木充敏幹事長は「実行力を持ったベストチームを作り、成長と改革結果を出す。結果にコミットする」と、経済再生、増税ゼロを公約した。 今回の総裁選では告示に先立ち、小林氏が石垣市、茂木氏が与那国町に足を運び、国境離島の振興や台湾有事をにらんだ安全保障政策をPRした。総裁候補の八重山訪問は異例で、国政の場で八重山の注目度が高まっている。 小さな離島も国際情勢とは無縁ではあり得ない。日本が誰をリーダーに選び、どのような進路を選択するかは、住民一人ひとりの運命にダイレクトに関わってくる問題である。