圧勝したW杯2度V豪州代表には日本代表のラグビーはどう映ったか?
さらに23分には、ビールが好判断を下す。鋭く飛び出る防御網の背後へ柔らかいキックを通し、ウイングのマリカ・コロイベッテがその球をキャッチ。そのまま敵陣22メートルライン付近まで進むと、日本は周辺の接点でたまらず反則を犯す。またも自陣ゴール前で相手ボールラインアウトを確保され、スコアを3―21と広げられた。 スクラムハーフ田中史朗が「(日本代表には)無駄な、意識すればなくせるようなペナルティーが多かった。もったいない」と話す傍ら、好キックを放ったビールは重い言葉を残す。 「日本は我々がやりたいラグビーをさせないようなディフェンスを持っている。そう思って準備したが、その準備がうまくいった。やっていたことはノーマルなセッション。自分たちのシステムを確認し、それを少しずつ相手に合わせていくということでした」 普段通りに戦えば壁を壊せるだろう、という意味に映った。 ビールは続く32分にも、ハーフライン付近右のラインアウトからの連続攻撃で光る。フーパー、ナンバーエイトのショーン・マクマホンが続けて突進した次の場面で、せり上がる防御網の裏へ鋭角に駆け込む。パスを受け取り、タックラーを背負いながら、左隅に立つセンターのテヴィタ・クリンドラニへパス。クリンドラニはそのままフィニッシュし、スコアは3-28と広がった。ビールは言う。 「自分に課されていた、ディフェンスへの宿題をきちんとやっただけ。ジャパンのラインスピードは速かったし、プレッシャーもありましたが、あそこはチャンスだと思いました。スペースを見て、突いて、トライに繋げられました」 チェイカHCは「ボールを持ってコンタクトした際のレッグドライブ、タックルが有効でした。(防御網の)ラインスピードもよかったと思います」と細かなプレーに注目。もっともここで挙がった「レッグドライブ」も、何度か裏目に出た。敵陣深い位置でチャンスを得た前半37分頃、倒されながら足を掻いて前進するスタンドオフ松田力也のプレーが「ボールを手離していない」という反則となった。 その3分後には、スコアを3―35とされて勝負が決まる。この時は日本が自陣からキックも、その弾道を追う選手の数がまばらだった。体力がものを言いそうな時間帯の連携エラーについてフランカーの布巻峻介はこう述懐した。 「(自陣で次の)アタックの準備をしていて、(蹴った先まで)距離があったのですが、上がっておく(揃って弾道を追う)べきでした。上がっておけば、止められたと思います」