アメリカは「第2の南北戦争」という「内戦」を回避できるのか 白人支配終焉と「憎悪の火に油を注ぐ」極右政党
たとえ彼らが「あらゆる男性と女性は平等につくられている」との考えを再確認しうるだけの先見性に恵まれていたとしても、アメリカがやがて直面する無数の変化を予測するなどおよそ不可能であったろう。 工業化の波、巨大都市化、自動車の氾濫。未来における国富や軍事力、グローバル化に洗われつつ生起する変化など知りようもなかった。インターネットはどうか。気候変動は。火星旅行。想像だにしえなかったことだ。 ■多民族的民主主義の創造
現在、アメリカは真の意味で、多民族的民主主義の創造という課題に直面している。 世界規模の移民が人口統計上の数字とアイデンティティを形成し続ける中、存続発展する国家を創成するという途方もない課題である。 1700年代後半から世界は劇的な変化を遂げた。民主主義とは、もはや白人農場所有者の専売特許ではない。女性、農村部、褐色人種、混血あるいはその間にいるあらゆる層が包含されるようになった。 私たちはすべての人々を必要としている。移民を阻止する国は、人口減少の中で緩慢に滅亡していくだろう。われわれの民主主義は小集団の権利を守るとともに、国家としてのアイデンティティを1つのもとに据える必要がある。多民族的民主主義へのシフトが平和裏に、しかも発展を阻害することなく遂行していく様を世界に示していくことである。
アメリカは、白人が市民の多数派的地位を喪失する最初の民主主義国家となる。それは2045年と予測されているが、他国も続くことになるだろう。2050年あたりには、カナダとニュージーランドで白人は少数派となる。2066年にはイギリス、2100年にはすべての英語圏国で同様の変化が起こる。 これらの国々の極右政党は、白人支配終焉に際して不吉な警告を発しており、その変革に伴う経済・社会・道徳的費用は莫大として、憎悪の火に油を注いでいる。
だが、それはただの神話だ。権力というものをゼロサムでしか理解できない人々による手の込んだ新手のおとぎ話である。すでにいくつもの都市で誤謬は証明されている。 バーミンガムやメンフィスなど、人口の大半を黒人が占める都市では、黒人の市長が誕生し、しかも白人有権者の支持を得ている。黒人による政治権力の掌握は報復とともに、白人の経済的衰退を招くとの懸念は杞憂と知った。生活にさしたる変化は見られず、他方で黒人の生活水準は向上した。多民族政党による政権運営は、幸福な生活にとって脅威とはなりえないと知られるようになった。新たに到達した平和への均衡点だった。