日鉄「USスチール買収」は根拠なき熱狂の疑いあり
Jon Rehg/shutterstock.com
「2年ほど、米国での事業をどうするか検討してきた」 2023年12月18日、日本製鉄社長(当時、現会長)の橋本英二(68)は米鉄鋼大手USスチールの買収計画を発表した際、その狙いをこう語った。総額141億ドル(約2兆1000億円)という投資金額に煽られた内外のメディアは「世紀の買収」と騒ぎ立てたが、橋本自身の認識はこのコメントに凝縮されているように海外事業戦略の延長線に過ぎなかったのかもしれない。 同時刻にオンライン説明会を開いていたUSスチールの最高経営責任者(CEO)デビッド・ブリットに対し、記者から、120年以上の歴史があるアメリカ有数の鉄鋼メーカーが日本企業の傘下に入ることについて「安全保障上のリスクが生じるのではないか」との質問が飛んだ。だが、ブリットは「日本は米国にとって最大の同盟国の1つだ。リスクは低い」と否定的な見解を示した。「(買収は)経済安全保障に対応するためだ」と会見で語った橋本はじめ日鉄側もそう確信していた。
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安西巧