<ラグビー>日本選手権で最後の学生vs社会人 帝京大は勝てるのか
この国の楕円球シーズンを締めくくる日本選手権が1月21日、大阪・東大阪市花園ラグビー場で開幕する。 今季は国内最高峰トップリーグの上位3チームと大学王者の計4チームがトーナメント戦を行う。来季からは、同大会での学生枠がなくなる。そのため今季の学生対社会人の試合には、例年にない感傷的な要素がある。 今度の当該カードは「準決勝第2試合」。大学選手権8連覇中の帝京大と、トップリーグ王者であるサントリーとの一戦だ。学生枠で出場する帝京大にとっては、学生枠の意義を示す当面最後のチャンスとなる。「いい機会をもらった」。亀井亮依主将は、しみじみと語る。 今度の巡りあわせがなくとも、この激突はスポーツファンにとっての注目株だった。 帝京大は14年度の日本選手権で、トップリーグ10位だったNEC(当時あった「ワイルドカード枠」で参戦)に31―25で勝利。以後は大会方式変更のため首位チームとの対戦を余儀なくされ、涙をのんできた。 もっとも、そこまでの過程では、春先から優勝候補のチームとの練習試合を敢行。今シーズンはそれに加え、陣形をかたどっての展開、タックルされながらも球を繋ぐスキルと連携にこだわってきた。全国クラスの大会での連覇記録を塗り替えたうえで(20世紀の新日鉄釜石と神戸製鋼が日本選手権などで7連覇)、悲願達成を誓っている。 日本選手権の学生枠を行使できる最後の集団、帝京大が、打倒サントリーを目指す。観戦者にとっての見どころは、大まかに言えば三つだ。 ひとつ目は、肉弾戦をどう制すか。 最初にコンタクトする選手は、常に前傾姿勢で突っ込む。ボール保持者をサポートする際は、相手防御の腕やジャージィを掴みながら前に出る…。そんな帝京大フォワード陣の肉弾戦におけるスキルと強度には、対戦経験のあるトップリーガーたちも「学生とは思えない」と舌を巻く。 サントリーには、その肉弾戦で相手の持つボールへ絡む「ジャッカル」の得意な選手が揃う。筆頭格は、オーストラリア代表111キャップ(国際真剣勝負への出場数)を誇るジョージ・スミス。身長180センチ、体重105キロと限られたサイズながら、その身体は樫のごとく強い。今度はリザーブに控える。 スミスとはオープンサイドフランカー同士となる帝京大の亀井主将は、「相手よりも速く。相手が力強いのであれば、相手よりも速く」。迅速に味方をサポートし、向こうの「ジャッカル」の隙を与えない。 勇敢なリーダーは、こうも言う。 「1対1のところでどれだけファイトできるか。最終的にはそこ」 そう。守る際の「1対1」のタックルでは、どうにか前へ出たい。少なくとも、攻防の境界線上に踏みとどまりたい。ひとたびサントリーの突進役(ロックの真壁伸弥、フランカーのツイ ヘンドリックら)に差し込まれれば、向こうの連続攻撃を後退しながら受けてしまうからだ。まずはバックス陣とともに横一線の防御網を張り、練習通りの出足でプレッシャーをかけにゆく。 肉弾戦に頭をねじ込むか、そちらへ力を注がず次のプレーに備えるか…。その見極めも問われる。フッカーの堀越康介は、敵にぶつかる前とぶつかった後の動きをこう解説する。 「サントリーさんはテンポよくボールを回してくる。(肉弾戦でボールを奪うのが)難しそうだとわかれば(そこへは人数を)かけず、根気強く(列をなして)ディフェンスをしていきたいです」