「何かあったら責任もてないから」先天性の心臓異常、大人になっても職場が「壁」理解得られず孤立 医療進み、今や95%が成人に
加えて、先輩となる患者とメンターとしての関係を早期に築くことも効果的だという。北欧諸国では病院が主導してそうした機会を提供しており、学校生活や恋愛、就職など、成長につれて生じる心疾患特有の悩みを相談できる。国内でも成人患者に相談できる場を設けている病院もあるが、任意の取り組みで極めて限定的だ。制度として定着させれば、社会に出た際に直面するハードルや戸惑いの軽減が期待できるという。 一方で病院だけに支援を求めるのにも限界があるとして、落合准教授は「NPOやハローワークなど、さまざまな機関が連携した支援が必要だ」とも話す。モデルとして挙げるのは、愛媛大病院が主導する就労支援プログラムだ。病院では小児循環器外来の病棟に支援員による相談ブースを設けている。成長した患者が外来を訪れた際、希望の仕事や資格、配慮を必要とする点を聞き取り、医師や看護師、社会福祉士と企業が参加する委員会で協議し、希望を満たす職種とのマッチングまで実施する。実際に雇用する企業が参加するのが特徴で、どのような配慮が必要かを企業が知った上で採用できるので、定着につながりやすいという。
落合准教授はプログラムの意義をこう訴える。「さまざまな専門職が連携することで、支援の必要性を予測し、相談支援を充実させることができる。先天性心疾患患者への就労支援のニーズは今後も増えるので、全国に広めるべきだ」