「まさか、梶谷があんな選手になるなんてな」元コーチも驚いた18年のプロ生活…引退表明のDeNA→巨人・梶谷隆幸(36歳) 入団同期が見た“激動の日々”
「カジ、ホントに辞めるんだな」
「カジ、そんなに走ることにこだわりがあるなら、引退試合は史上初の、代走で盗塁してみたら? 巨人とDeNAのオープン戦の始球式みたいな感じで。そん時は俺、キャッチャーやるよ。全力でアウトにしにいくから」 「はっ、アホか」と、言われるものだと思っていた。「そもそも、引退試合なんかあるわけねえだろ」と、興味も関心も示さないものだと思っていた。しかし、カジは見たこともないくらいの明るい顔で答えた。 「そうだな。じゃあ、ショートに(坂本)勇人、ファーストは(岡本)和真か。サードに(宮崎)敏郎で、ピッチャーは(田中)健二朗だな。セカンドはナベ(渡邊雄貴、元DeNA)に入ってもらおう。レフトはゴウ(筒香嘉智)」 あまりにも爽やかに、この冗談に乗ってきてしまっているカジを見て、「あぁ、カジ、ホントに辞めるんだな」と思った。「まだ諦めんな」という言葉は飲み込まざるをえない。カジだって、中途半端な気持ちで引退と向き合っているのではない。 「お前よりも、3倍も長くプロ野球選手やったけど、一番の思い出は、お前と横須賀で死ぬほど練習したことだな。田代(富雄)さんがいて、とっつあん(高木由一、元ベイスターズコーチ)がいて、万永さんがいて。 本当に朝から夜まで、あんなに練習させてもらってさ。あんな練習、今だったら絶対やらせてもらえないよな。絶対に、戻りたくはないけどな。あんなキツいこと、もう二度とできない。でも、最初に入った球団が横浜で、本当に良かった」 カジは、努めて爽やかに、明るく話しているように見えた。 そう、これは悲しい話ではない。プロ野球という世界で18年もの間戦い抜いてきた戦友が、ついにその舞台から降りる。これは、実に誇らしい話で、心の底から祝福すべき話なのだ。しかし、昔話に花を咲かせようとするカジの目が時折潤むたびに、絶対に俺からは泣かない、という意地が頭をもたげる。泣いてしまおうと思えば、いつでも泣けた。でも、お互い、「絶対に俺からは泣かない」という意地を張り合いながら、夜は更けていった。 「実は、球団は俺に来年を用意してくれてたんよ。CS前に二岡(智宏)さんから、『来年に向けてまた体を作っておいてくれ』って言われてさ。でも、俺は引退を決めていたから、その時初めて打ち明けた。こんな体で、こんな状態の俺を、来年も戦力として考えてくれていたことは、驚きもあったけど、ものすごく嬉しかった」 2024年、4年振りのリーグ優勝を果たしたジャイアンツであったが、クライマックスシリーズでは勢いに乗る横浜DeNAベイスターズに敗れ、日本シリーズ進出とはならなかった。課題は、打力。梶谷の打力は、来季の貴重な戦力として計算されていた。しかし、一度気持ちが切れてしまったものが、グラウンドにいるべきではないという梶谷の決意は変わらなかった。それでも、梶谷の培ってきた経験はチームにとっての財産である。球団はコーチのオファーを出した。 「ありがたいお話もいただいた。でも、俺にとってコーチって、万永さんなんよ。今、俺は当時の万永さんの年齢になった。来年から18歳のルーキー相手に、万永さんが俺たちに向き合ってくれたあの熱量で、あれだけの多くの時間向き合えるかと問われたら、とてもできない。その足りない熱は、どこかで選手に見抜かれる。それは、人生を賭けて勝負しようとしている選手に、失礼。だから、俺はコーチを受けられなかった」
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