ユニクロの「ヤバすぎる」幹部向け小冊子の中身、柳井氏の「根っこ」がわかる
「経営者になるためのノート」に書かれていること
では、どのようなことが書かれているのでしょうか。市販もされていますが、ユニクロの大きな柱である「全員経営」を支える重要な原理原則ですので、ここでは概要をお伝えします。 まず、「ノート」では経営者を位置づけます。確かに「経営者になるため」とタイトルがついていても、「経営者」が何たるかを位置づけないと、そこに到達するために、どうすればいいかも見えてきません。 「ノート」の中では「経営者」は極めてシンプルかつ本質的に定義されています。「経営者」とは「成果を上げる人」です。 では、成果を上げるにはどうすればよいでしょうか。実践しなければいけません。ですから、経営=実践ともいえます。 どんなに素晴らしいプランがあっても、頭の中で考えているだけでは意味がありません。何も起きません。 素晴らしいプランを頭の中で考えているだけの人よりも、大したプランでなくても実践した人の方が「成果」は出せます。 ユニクロには、私のようなコンサル上がりが中途入社組としてかなりいます。また、大学の先生方にもサポートいただいています。 社長セッションでの討議の中で、そんな私たちを前に柳井さんが「コンサル出身者や大学の先生は、能書きばっかりで、実行のことが何もわからないから困るんですよね」的なことを言われて、こちらは下を向いて苦笑いするしかないということが何度もありました。 私も戦略コンサル20年超の経験の中で、いくら正しい戦略をつくっても、必ずしも成果が伴うとは限らないということを大きな問題意識として持っていたため、本当にグサッとくる言葉でした。 実践ということに関連して、柳井さんはよく「計画1割実行9割」ということも言われていました。 VUCAの時代ですから、従来のように何カ月もかけて戦略をつくっても、戦略ができたときには環境が変わって使い物にならないということも珍しくありません。もちろん、何も考えずに動き出すのは問題ですが、何かをしようとするとどうしても頭でっかちになりがちです。「計画1割実行9割」を強く意識することは非常に重要です。「経営者」を目指す上では欠かせません。 「ノート」をより細かく見ていくと、「経営者= 成果を上げる人」として、経営者として成果を上げるためにどんな能力が必要か書かれています。大きく分けて、4つの力が定義されています。 「変革する力(イノベーター)」 「儲ける力(商売人)」 「チームを作る力(リーダー)」そして「理想を追求する力 (使命感)」の4つです。「理想を追求する力(使命感)」が4つの力の中心にあります。 それぞれの力はひとつ7項目から構成されています。たとえば、「変革する力」でしたら、 ・目標を高く持つ 常識を疑う。常識にとらわれない 基準を高く持ち、妥協とあきらめをしないで追求する リスクを恐れず実行し、失敗したらまた立ち向かう 厳しく要求し、核心をついた質問をする 自問自答する 上を目指して学び続ける これが4つの力ごとに用意されていますので、4×7で28項目になります。