ユニクロの「ヤバすぎる」幹部向け小冊子の中身、柳井氏の「根っこ」がわかる
ディズニーのエピソードが引用されている?
また、各項目に具体的イメージを持つためのエピソードが用意されています。 たとえば「変革する力」の「目標を高く持つ」項目には常識で考えたらまともとは思えないくらいの高い目標を持つことがイノベーションの源泉になると書かれているのですが、そこにはウォルト・ディズニーのエピソードが引用されています。 老若男女を問わず、世界中の人々に夢を与え続けているディズニー映画ですが、かつてアニメーションは子供向けの短編作品がほとんどでした。アニメーションは「動く漫画」の位置づけで、地位も低かったのです。 それを芸術作品に変えようと試みたのがディズニーです。彼はひとりで巨額を投じて長編作品をつくり始めたのです。周囲は驚きます。「アニメで長編なんて馬鹿げている」「道楽にすぎない」と揶揄していましたが、彼は奥行きを表現できる特殊カメラを使うなどして、1937年末には初の長編アニメ『白雪姫』を世に送り出します。 同作はアカデミー賞特別賞に輝きます。アニメが芸術として認められた瞬間です。ディズニーが「誰もやっていないから」「できそうもないから」と常識にとらわれていたら、アニメの発展は今よりは確実に歩みが遅いものになっていたでしょう。 もしかするとみなさんは「目標を高く持つ」と聞くと「そんなの働いている人にしてみれば当たり前では」と思われるかもしれません。「変革する力」にある他の項目の「常識を疑う。常識にとらわれない」「上を目指して学び続ける」も珍しいものではないでしょう。どこかで聞いたり、見たりしたことがあるはずです。 ただ、経営の原理原則は、聞いてみれば当たり前のことでしかありません。経営者が結果を出さなければいけないことも、企業を急成長させて高収益を上げなければいけないことも当たり前です。 柳井さんもいつも言っていますが、経営の原理原則は至ってシンプルです。誰よりも多くの経験を結晶化し、簡潔極まりなく結晶化したからこそ、柳井さんの教えはシンプルなのです。 「ノート」では身近なエピソードを織り込むことで、多くの人が読みやすい構成に仕上げています。「常識を疑う。常識にとらわれない」でも、冬のアイスクリームや夏のおでんのヒットの事例を盛り込んでいます。 季節性を逆手にとったビジネスモデルで常識を打ち破ったわかりやすい例です。理念や原理原則はただ文章が並ぶため、ときには遠い存在になりがちです。身近なエピソードを引用することで、誰もが読める内容になっています。
※本記事は『ユニクロの仕組み化』を再構成したものです。
執筆:宇佐美 潤祐(元ファーストリテイリング執行役員)