世界の25年銅地金需給、16万トン供給不足。価格は8000~1万500ドルで推移ーPPC予測
パンパシフィック・カッパー(PPC)は、2025年の世界銅地金需給バランスが16万トンの供給不足になると予測している。24年は5万2千トンの供給過剰となる見通し。中国やインド、インドネシアでの増産が想定されていたほど進んでいない一方、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー関連を中心に銅需要が伸びると想定する。銅価格は25年1~6月はトン8千~1万ドル、同7~12月はトン8500~1万500ドルのレンジで推移すると予測。年前半はドル高や、中国の春節など季節要因による需要減少を想定するが、需要が盛り上がる秋口以降からレンジを一段切り上げると予測した。 25年の銅地金需給は、生産量が2661万トン(前年比2・5%増)、消費量が2677万トン(同3・3%増)と予測。供給面では、インドとインドネシアの新規製錬所が早期立ち上げを実現できていないことに加え、原料需給のひっ迫と買鉱条件の悪化を背景に中国の増産が計画されていたほどは進まないと想定した。インドネシアでは立ち上げ作業中だったマニャール銅製錬所が10月に発生した火災の影響で操業を停めている。今回のPPC予測では1~3月の再稼働を前提に予測したが、再稼働時期が遅れれば供給量の下振れ要因となる。インドの新規製錬所も溶錬工程がまだ立ち上がっていない段階で、本格的な操業に至るには時間がかかるとみられる。 需要面では、中国の消費量は前年比で1・6%程度の伸びにとどまると予想するが、インドや東南アジアでは10%超の成長率を見込む。既存用途である建設関連が堅調に伸びる見通しにあることに加え、EVや電力網整備などの需要が中長期的に伸びると見ている。 銅価格は、足元ではドル高見通しを受けて調整局面にある。年明けも中国の春節による需要減を反映し、一段安となる可能性もあるが、夏場をめどに下値を固め、秋口以降はレンジを切り上げると予測する。25年はLMEとCMEのロシア品制裁の影響や、買鉱条件の悪化による地金減産の可能性、中国でのリサイクル銅使用時の税制優遇廃止や銅加工品輸出時の増値税還付廃止の影響のほか、ストライキなどの供給障害、インド・東南アジアの経済成長、EV・再エネ・AI関連需要の拡大などを強気材料と想定。一方、インドとインドネシアの新規製錬所の垂直立ち上げ実現や、中国不動産不況のさらなる深刻化、トランプ次期米大統領が関税戦争を仕掛けた場合の世界的なインフレ・景気減速などを弱気材料と想定する。 長期的には銅需要の拡大と新規鉱山案件の不足などから鉱石需給が大幅な不足に向かう見通しにあり、そのギャップを埋めるには9千ドル超の銅価格が必要との見方もある。価格の下落局面が長引けば新規開発が進まず、生産コストが上昇傾向にあることからも下値は堅く推移すると見ている。