スモモ栽培で雨よけ棚推進 省力化、正品率アップ JA南アルプス市
山梨県のJA南アルプス市は、スモモ栽培で雨よけハウスの導入を進めている。棚栽培で枝の高さを一定にすることで人工授粉作業や収穫作業が容易になり、風と雨を防げる。現在7園地、計40アールが棚栽培でハウスを設置。農家は裂果が少なくなり、正品率が上がるなどの利点を感じている。 JAはスモモの生産量日本一の産地で、昨年は約1200トンを出荷した。 JAが組合員に増植や改植を勧めているのが「貴陽」だ。JA管内で生まれ、1996年に品種登録された。大玉果と食味の良さで贈答品として人気が高く、他の品種と比べ市場価格も高値で取引される。 一方で、雨で果実が割れやすく、裂果防止に傘紙をかける必要があることや、結実しにくいため人工授粉が4、5回必要で、栽培に手間がかかる。加えて管内は強風が吹くため、果実が風で落ちてしまったり、葉でこすれて傷が付いてしまったりといった被害も発生している。栽培面の難しさ、結実の不安定さから、生産量は徐々に減少傾向にある。 そこでJAが10年ほど前から対策として進めてきたのが、スモモに多い立ち木栽培ではなく、ブドウなどに多い棚栽培とそれを覆う雨よけハウス施設だ。金属価格の高騰などによる初期投資の負担が大きく、当初は両方導入する農家はほとんどいなかった。 しかし2021年、米国産日本スモモの輸入が解禁されたことが転機となった。県内でも大きな話題となり、県が地方単独事業でスモモの雨よけハウスの建設を補助の対象としたため、同JAも積極的に進めてきた。同事業を機にハウス施設を導入した同市今諏訪地区の浅川豊さん(68)は「貴陽」の他、「太陽」「皇寿」を施設で育てている。「ハウスの畑の貴陽は明らかに裂果が少なくなり、正品率がかなり上がった。導入して良かった」と話した。 JAは南アルプス市と協力し、「貴陽」を含む奨励品種の果樹苗木を対象に、助成する果樹振興事業も行っている。事業を開始した09年からこれまで、計2773本の「貴陽」の優良苗木を組合員に供給してきた。 JA営農経済部の手塚英男次長は「最高品質の貴陽を継続的に生産できるよう、さまざまな策を講じてきた。これからも貴陽発祥の地として産地を支えていきたい」と話す。
日本農業新聞