「担任制改革×40分授業」始めた公立小の1年半後 川西市立多田小学校「新教育課程導入」の舞台裏
「学級担任制では学校運営が回らないと思った」
川西市立多田小学校(兵庫県川西市)では、2023年度より「学年担任制」「教科担任制」「40分授業午前5時間制」を組み合わせた新教育課程を導入した。この取り組みは、教員の負担を軽減して多様な働き方に対応するとともに、児童の自律を促すことを目的としている。導入から1年半を経て、どのような成果や課題が見えてきたのだろうか。校長の西門隆博氏と、新教育課程のプロジェクトリーダーを務める森優太氏に聞いた。 【図で見る】子どもにも教員にも好評、「40分授業午前5時間制」の時間割とは? 多田小学校(以下、多田小)の新教育課程では、児童の発達段階を考慮した担任体制を取る。1年生は学校生活に慣れることを優先して「学級担任制」、2年生は「学級担任制」を継続しながらも「教科担任制」を導入、3~6年生は「学年担任制」と「教科担任制」を組み合わせている。 授業は1コマを45分から40分に短縮し、午前中に5時間目までを行う。午後は、基本的に漢字や計算の基礎学習を行う20分の「多田小タイム」を設けており、6時間目と多田小タイムを合わせて60分枠で授業や特活などを行うこともある。 これらの変更に伴って週4日は、下校時間が6時間授業の日は15時40分から14時45分へ、5時間授業の日は14時45分から14時へと早まった。 多田小では、なぜこのような改革を実施したのだろうか。校長の西門隆博氏が教育課程を見直す必要性を感じ始めたのは、2022年度の1学期のこと。産休に入った教員の代替講師が見つからなかったことがきっかけだった。 「当時は新型コロナの流行も続いていて欠勤する教員も多く、担任のいないクラスは落ち着かない一方で、ほかのクラスの児童は普段どおりの生活を送っているという状況が生じました。同じ学校なのにクラス間で差があるのはおかしい、もう学級担任制では学校が回らないと思いました」(西門氏) 学年担任制にすれば、1人の教員が不在にしても同学年のほかの教員がフォローでき、授業や学級運営の均質性を保てる。教科担任制も合わせて導入すれば、教員の授業準備の負担を軽減でき、担任と児童の「合う・合わない」という悩みも起こりにくくなる。 そう考えた西門氏だったが、実現に当たっては、同じ学年の教員同士が情報共有を行う時間の確保が必要だろうとも思った。ここについては、かなり頭を悩ませたという。 「従来の6時間授業の日の場合、放課後に教員が職員室に戻れるのは16時頃。そこから情報共有の時間を取ると定時には帰れなくなってしまう。対応策を模索する中で知ったのが、東京都目黒区が2019年度から実施していた『40分授業午前5時間制』でした。これを導入すれば、放課後の時間を確保して、学年担任制と教科担任制を実現できると思ったのです」(西門氏)