「40人中39位」でパリ五輪に滑り込み…女子ハードル田中佑美(25歳)が振り返る“大舞台までの苦悩”「ギリギリの出場…怖気づく場面もありました」
パリ五輪陸上女子100mハードルに出場した富士通の田中佑美(25歳)。40人の出場枠のうち39位からの挑戦で、敗者復活戦を勝ち上がり、準決勝進出を果たした。初の五輪で見事なパフォーマンスを披露し、スタート前の軽やかな「笑顔」も話題に。一方、当落線上から内定したことによる不安も大きかったという。今季のレースを終えた田中に、五輪内定までの過程やレースを振り返ってもらった。《全3回の1回目/つづきを読む》 【写真】「えっ、何頭身なの…?」172cmの“モデルハードラー”田中佑美(25歳)女性誌でも披露の長~い手足とバキバキの腹筋。試合での迫力のハードル飛越に、爽やかな私服インタビュー特撮も…この記事の写真を見る 6月30日、新潟で行われた日本選手権。女子100mハードル決勝は、日本記録保持者の福部真子(日本建設工業)が制して代表内定を決めた。 福部が喜びをあらわにする傍ら、2位の田中は報道陣の前で涙をこぼしながらこう語った。 「私はまだ25歳で、これからも競技を続けますし、オリンピックもまた来ます。オリンピックが陸上のすべてではないですけれど……もっともっと速くなれるように頑張ります」 それは、パリ行きを断念したかのようにも取れる言葉だった。
日本選手権直前に起こった「誤算」
田中は当時の心境を明かす。 「パリの参加標準記録(12秒77)を目指すのはもちろんのこと、ポイントを稼ぐために海外遠征に積極的に取り組んでいたシーズンだったので。自分の計算では『まあ行けるんじゃないか』という位置にいたんです。でも、日本選手権直前に大きなポイント変動があって……。精一杯のレースをしたのに届かなかったという感触だったので、悔しい気持ちでいっぱいでした」 田中の言う“ポイント”とは、ワールドランキングのパフォーマンススコアを意味する。 世界陸連は2019年から「ワールドランキング」――有効期限内に世界各地で行われる各大会のグレードや、順位などをポイント換算して算出するランキング上位(五輪出場枠=ターゲットナンバー)に入れば、出場資格を得られるという仕組みを導入した。つまり、参加標準記録を突破できなくとも、複数の大会でコンスタントに記録や結果を残せば、五輪への道が開けるというものだ。 ワールドランキングは各大会で獲得したポイント=パフォーマンススコアの平均値で順位付けされる。パフォーマンススコアは、風の影響などを考慮した「記録スコア」と「順位スコア」を合わせたもの。順位スコアは大会のカテゴリーによって異なり、同じ順位ならばグレードの高い大会のほうが高いスコアが得られるようになっている。 田中が年明けのインドアレースから始まり、海外を転戦していたのは、よりグレードの高い試合に出場して、ポイントを稼ぐためだった。 「元々、記録や順位に執着しないというか、そこを目指してやっていくタイプではないんです。結果としてついてくるものという感覚が強くて。なので、オリンピックに出るための戦略としても、絶対に標準を切るという目標を掲げるのは、自分の性に合わないんですよね。私みたいな選手にとって、ワールドランキングはすごくありがたい制度なんです」 よりグレードの高い海外レースを中心にポイントを重ねていくことで、五輪出場を固いものにしておきながら、参加標準記録に近づくようなパフォーマンスを狙う。これが田中の戦略だった。 春先を振り返ると、国内緒戦の織田記念を13秒00(-0.1)で優勝。セイコーゴールデングランプリ(GGP)では向かい風の中、12秒90をマークし日本人トップの2位に入るなど、着実にポイントを重ねていた。
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