「40人中39位」でパリ五輪に滑り込み…女子ハードル田中佑美(25歳)が振り返る“大舞台までの苦悩”「ギリギリの出場…怖気づく場面もありました」
ランキングで五輪出場のはずが…迫られた標準記録突破
GGPを終えた段階で、ワールドランキングは日本人最上位の34位。ところがその後、ヨーロッパ各国の国内選手権などで記録突破者が増え、日本選手権を迎える時点でボーダーライン近くまで下がってしまったのだ。 「ポイントを稼いだ時点で(五輪出場を)手に入れたつもりでいたんです。それが日本選手権直前に参加標準記録を突破しなきゃいけない状況になってしまった。勝手に軸が設定されたような、想定していたものと違う目標を差し込まれた形になり、より精神的に迫るものがありました」 本来なら参加標準記録突破という緊張感を背負わずとも、最低でも表彰台に乗れば五輪内定を確実にできるはずだった。その計画に直前になって暗雲が垂れ込めたことで、焦りが生じたのも無理はない。 その日本選手権の準決勝では、ランキングの“圏外”にいた福部が参加標準記録を突破する12秒75をマーク。田中も日本歴代2位となる12秒85の自己ベストをマークしたが、心中は穏やかでなかっただろう。決勝は福部が制して即内定。田中も参加標準記録突破と優勝を狙ったが、12秒89で2着と届かなかった。 田中の五輪行きは、日本選手権の数日後に確定するワールドランキングの順位に委ねられた。 「日本選手権が終わってから『自分は本当にオリンピックに出たいのだろうか』とも考えました。誤解を恐れずに言えば、もともと世界選手権やオリンピックに強烈なこだわりがあるわけではないんです。オリンピックに出られないから打ちひしがれていたというより、自分の中では『行けるだろう』と思っていたものが、急に見えなくなった喪失感のほうが大きかったのだと思います」 冒頭の「オリンピックがすべてではない」という発言は、彼女のそうした正直な心境が漏れ出たものでもあった。 それでも、掴みかけた五輪行きをそう簡単に諦めることはできない。何度も何度もスマホのページを更新し、ランキングの動向をチェックした。 「(ランキングが確定する)当日は、結局夜まで更新されなかったんです。時差もあるので諦めて寝ることにしました」
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